本研究の目的は,旋法と律動の定量的統一モデルをつくり,それを用いた旋律および楽曲生成システムを開発することである. 音楽情報処理分野において音楽生成の研究は近年盛んであり,計算機を用いて音楽を生成する試みも多く行われている.しかしながら,依然として音楽の分野で経験的に作られた従来の音楽理論を基にしたモデルやシステムが一般的であり,計算機上で音楽を扱いつつも完全な定量的なモデル設計ができていない.本研究では,音楽で用いられる音の物理的特徴量である音の高さと音の長さの関係性を用いた音楽の理論構築を行う.そして,従来の音楽理論との比較検討を行い,提案モモデルによる音楽生成システムの開発を試みる. 2018年度に作成した音高と音価を比によるラティス空間で表現するモデルを用いて,2019年度はユーザーのパラメータ調節によって音楽生成システムの構築を行った.2020年度はこのシステムの改良を行った.具体的にはこれまでの0からの音楽生成だけでなく,既存曲をmidiファイルとして読み込み,それらのピッチ情報をいままでに用いてきた音高のラティス空間にマッピングし,既存曲の旋法情報を扱い音楽を出力できるようにした.これらの成果はそれぞれ国際会議ICAARTで発表を行った. また,アウトリーチの一環として,国内会議などで招待講演にて本研究のコンセプトおよびシステムの紹介も行い本研究の普及をおこなった.さらに,これまでに作ってきたアプリケーションをwebページにて公開した.
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