研究実績の概要 |
樹木年輪と衛星観測データ(NDVI3g)が森林スケールにおける生態系純炭素吸収量(NPP)をどの程度反映しているかを検討するために、カラマツが優占する東シベリアの森林サイト(ヤクーツク:62N 129E)において、それらの年々変動を比較した。その結果、同サイトでは、樹木年輪が森林スケールでのNPP指標としてより優れている可能性が示唆された。本成果は、国際誌であるPolar Scienceに投稿・受理され、現在印刷中である(Tei et al., in press, Strong and stable relationships between tree-ring parameters and forest-level carbon fluxes in a Siberian larch forest)。 また、樹木年輪、衛星観測データ(NDVI3g)と第5期結合モデル相互比較計画(CMIP5)に参加した11個のモデルから出力されたNPPの気象データとの相関関係の空間分布を周北極域広域で比較し、全般的に現状のモデルが樹木年輪幅、衛星観測データ(NDVI3g)を用いた解析で見られた気温上昇に対する負の応答を適切に再現できないことが示された。また、モデルによるNPP出力が降水量変動に対して過剰に正に応答していることも明らかとなった。これらの結果は、現状のモデルによる将来の森林生態系の炭素固定量見積もりは過剰評価になっている可能性が高いことを示唆するものである。現在、本成果を国際誌に投稿する準備を進めているところである。
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