研究課題
南極沿岸域の氷床・海洋・海氷システムは,全球規模の海洋深層循環・気候変動や海水準変動に多大な影響を与える。本研究課題では,観測的知見が乏しい東南極を対象に,南極沿岸システムの観測研究を実施した。(1) リュツォ・ホルム湾の湾口から白瀬氷河舌前面に至る広域海洋観測データの解析結果を軸として,数値モデルや測地・雪氷学分野との融合研究を行い「白瀬氷河舌の下に非常に温暖な沖合起源の暖水が流入することで顕著な底面融解が生じ,その融解強度は卓越風による暖水流入量の変動を介してコントロールされる」というメカニズムを提唱した。この研究成果を,国際学会で発表したとともに,国際学術誌に投稿し,論文改訂中である(Hirano et al., Nature Communications)。(2) トッテン棚氷の前面海洋(JARE59次,2018年3月)および近傍大陸斜面域(水産庁「開洋丸」南極調査航海,2019年2月)で取得した広域・詳細な海洋観測データの解析を実施し,トッテン棚氷の近傍海域には0度を超える非常に高温の沖合起源水が分布し,それが棚氷の下へと流入しているという観測的証拠を得た。また,大陸斜面以北に定常的に複数存在する中規模渦が,沖合起源暖水の陸棚外縁への極向き輸送に重要な役割を果たしていることを示唆する結果を得た。これらの研究成果を国内学会で発表した。(3) 東南極の主要な南極底層水形成域であるケープダンレーポリニヤにおける詳細な時系列観測データやバイオロギングデータの解析を行い,当該海域における活発な海氷生成に伴い形成される低温・高密度水(南極底層水の母海水)および沖合から流入する暖水の水塊特性・分布特性の季節変動を調べた。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件)
Report of the Working Group on Ecosystem Monitoring and Management, CCAMLR
巻: WG-EMM-2019/42 ページ: -