研究課題/領域番号 |
17K12813
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 かがり 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (60526888)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオロギング / 海生哺乳類 / 移動 / 採餌行動 / 体密度 / マッコウクジラ / ヒレナガゴンドウ |
研究実績の概要 |
本研究では、動物搭載型記録計を用いて大型ハクジラ類の行動や栄養状態の変化を指標として、中深層生態系を観測する手法を確立することを目指している。 平成30年度においては、長期の行動データの取得に向け、五島列島周辺海域において、マッコウクジラの若オス二頭に衛星発信器の装着を行った。1頭は5月下旬から約1か月間にわたって(個体番号1)、もう1頭は7月下旬から約一週間にわたって追跡することが出来た(個体番号2)。計140地点で、水温・行動データを取得し、解析を進めている。個体1では、追跡していた期間、30km四方の非常に狭い範囲で移動を繰り返しており、個体2でも同様の傾向がみられた。数少ないデータではあるものの、夏期においてマッコウクジラの若オスは非常に狭い海域を集中的に利用していた可能性が示唆された。 餌の捕獲の際に特異的な加速度波形を検出するために、飼育下のハナゴンドウ3頭を対象に実験を行った。飼育個体に動物搭載型のビデオカメラと加速度ロガーを吸盤で取り付けた。なお、本実験では実験に先立ち吸盤装着への順化を実施した。順化の過程で吸盤の装着を忌避しないと認められる個体のみを実験に用いた。5m四方の生簀内で個体が自由に遊泳できる状況で、投餌を行った。動物搭載型ビデオカメラから得られた映像と加速度ロガーの記録を擦り合わせ、捕獲に特異的な波形を検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
長期の行動データを得られつつある。しかし、衛星発信器を装着するための小型の銛がクジラの体表面に跳ね返り上手く装着出来なかったり、装着できたとしても装着期間が1週間に満たない事例が、申請者や他の研究者らの調査でもみられている。現時点では、長期の行動データを安定して取得することは出来ていない。衛星発信器が非常に高価で、装着を数多く試みることが出来ないことも関連している。令和元年度では改良した衛星発信器を、野外のマッコウクジラに適用する予定である。 飼育下の個体を用いた実験においては、概ね計画通り進んでおり、加速度波形から捕獲に特異的な波形を検出することが出来た。令和元年度では、野外のヒレナガゴンドウまたはマッコウクジラを対象に加速度計と動物搭載型ビデオカメラの適用を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
中深層へ潜水を行う大型ハクジラ類の移動経路や行動、肥満度の変化を長期にわたって把握するためには、より長期の追跡が必要不可欠である。そこで、1)衛星発信器の取り付け方法、2)衛星発信器の銛先に関して改良を行った上で、再度の取り付けを試みる。これを踏まえた上で、最適な銛先を選択し、長期データ取得可能な加速度計付きの衛星発信器を作成することを目指す。本年度が最終年度であるため、作成した発信器を取り付けるに至らない可能性が高いが、長期行動データを安定して取得できる方法を確立することを目指す。 中深層へ潜水するヒレナガゴンドウまたはマッコウクジラを対象として、動物搭載型ビデオカメラと加速度ロガーの取り付けを行う予定である。平成30年度の飼育下の実験で抽出した加速度波形をもとに、捕獲イベントを抽出、動物の目線を通して中深層の生物層を観測することを試みる。ヒレナガゴンドウの場合はノルウェー沿岸域において、マッコウクジラの場合は五島列島周辺海域において行う。両調査海域共に、共同研究者との連携は取れており、調査の際には万全の協力体制が得られる。
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