研究課題
食物連鎖の頂点に立つ高次捕食者の動態は、優れた環境応答の指標となる。具体的には、高次捕食者が何をどれだけ食べるのか?環境変動や個々の状態(栄養状態等)によってその捕食量はどう変化するのか?その動態は、生息環境の健全性の指標にもなりうる。本研究では、海洋の高次捕食動物である鯨類の環境応答を計測すること、鯨類の栄養状態や行動の変化から、海洋生態系をトップダウン的にモニタリングする手法を確立することを試みた。具体的には、次の三つの課題に取り組んだ。1)動物装着型記録計や動物ビデオカメラを用いたハクジラ類の捕食行動の観測:餌捕獲の瞬間を特定することは鯨類の捕食行動や餌生物の分布を把握するために重要である。飼育下のハナゴンドウに動物装着型記録計を装着、投餌実験を行い、捕食時に特異的な加速度波形を特定した。自然環境下で得られたデータへ本手法を適用する予定である。2)マッコウクジラの回遊経路と肥満度の推定:中深層生態系の高次捕食動物であるマッコウクジラの回遊経路と肥満度の変化をモニタリングし、クジラがどこで太るのか?クジラの肥満度の変化から中深層をトップダウン的に観測する手法を確立することを試みた。本研究期間中にマッコウクジラ2個体に衛星発信器を装着し1ヶ月にわたって行動を追跡することができたが、十分な行動データを同時に得ることはできなかった。引き続き調査手法の改良に取り組み、研究を継続する予定である。3)遊泳行動とドローン画像から推定したザトウクジラの肥満度の季節変化: 動物の肥満度を把握することは、その生態や人間活動の影響を知る上でも重要であるが、自然環境下で大型鯨類の肥満度を直接計測することは困難である。本研究では、二つの独立した手法(動物装着型記録計やドローン)を用いて採餌域のザトウクジラの肥満度や行動の変化を把握した。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)