研究課題
相模湾西部の沖合に位置する調査定点(水深120 m)において,溶存態有機炭素(DOC)の分子量分布の時空間変動を全有機炭素検出器によって調査した.水温は夏季成層期の表層で最大26.2℃,冬季混合期の深層で最低13.4℃を示した.塩分は深層においては34.4~34.6程度で安定していたが,表層においてしばしば低下し(~32.9),陸水の流入が示唆された.DOC濃度は夏季表層で高く,冬季では全層で低い値を示した.DOCの分子量分布には概ね2つのピークが見られ,平均分子量はそれぞれ1 kDaおよび10^2 kDa程度を示した.それぞれのピークを低分子DOC,高分子DOCと定義すると,全DOC濃度に対する高分子DOC濃度の割合は0%~10%程度で変動した.高分子DOC濃度は夏季表層で高い値を示し,冬季には全層において定量限界以下であった.また,低分子および高分子DOC濃度と塩分との間に負の相関関係が認められた.河川及び海洋のDOC濃度と塩分の関係から,河川からのDOC供給だけでは海洋のDOC濃度の変動を説明できないため,一次生産由来である自地性のDOC供給がDOC動態に重要であることが示唆された.全DOC,低分子DOC,高分子DOCの利用特性を調べるために,それぞれのDOC画分濃度とバクテリア生産量との関係を調べた.全ての関係において統計的に有意な正の相関関係が認められたが,決定係数は高分子DOC濃度とバクテリア生産量との関係において最も高い値を示した.一方,水温やクロロフィルa濃度とバクテリア生産量との関係においても,有意な正の相関関係は認められたものの,その決定係数は高分子DOC濃度と比較して低かった.以上のことから,高分子DOCは全DOCに対して最大で10%程度の現存量しか示さないものの,バクテリア生産の制限要因として重要であることが示唆された.
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Limnology and oceanography
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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Aquatic Microbial Ecology
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