研究課題/領域番号 |
17K12815
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
墨 泰孝 中部大学, 応用生物学部, 助教 (80757922)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 土壌微生物 / 土壌汚染 / リン循環 / 窒素循環 / 炭素循環 |
研究実績の概要 |
黒ぼく土の滅菌土壌に3つの異なる希釈段階の土壌懸濁液(10^1希釈、10^4希釈、10^7希釈液)をそれぞれ接種後、細菌数と糸状菌数が同程度になるまで培養し、種多様性の異なる土壌を調製した(PCR-DGGE法によって、細菌群集と糸状菌群集の種多様性が土壌試料毎に異なることを確認した)。その後、一過性の攪乱処理としてクロロホルム燻蒸処理、中期的な攪乱処理として農薬添加処理、長期的な攪乱処理として銅添加処理をそれぞれ実施した土壌試料について、最長180日間の培養を行った。培養した土壌試料を用いて、各種酵素活性試験(β-Dグルコシダーゼ活性、ホスファターゼ活性、プロテアーゼ活性)、16S rDNAおよび18S rDNAを標的とした細菌と糸状菌の群集構造解析、Biolog plateを用いた微生物群集の機能的多様性評価試験、銅の形態分析や細菌数、糸状菌数の計数を行った。 β-Dグルコシダーゼ活性は、種多様性や攪乱処理の違いに関わらず、培養期間中コントロールとほぼ同程度の水準で推移した。これに対して、プロテアーゼ活性は、攪乱処理によって種多様性の低い土壌試料(10^4、10^7)で処理前の値と比較して有意に低下した。特にCu添加処理区における活性の回復は遅く、培養開始から120日経過しても酵素活性は処理前の半分程度の水準に留まった。ホスファターゼ活性では、種多様性に沿った傾向はみられなかった。また、細菌と糸状菌の群集構造解析及びBiolog plateを用いた微生物群集の機能的多様性評価試験では、攪乱処理の有無に関わらず、種多様性が低い試料ほど、微生物群集の構造や機能的多様性の変動が大きいことが示唆された。その一方で、一過性の影響しかない燻蒸処理区において、種多様性の最も低い土壌試料が高いレジリエンスを示すなど、種多様性と攪乱に対するレジリエンスが一致しないケースも見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、黒ぼく土を用いた土壌試料の調製と攪乱処理を実施し、6ヶ月間の培養期間中に、酵素活性試験、PCR-DGGEによる細菌・糸状菌の群集構造解析、微生物群集の機能的多様性の評価、希釈平板法による微生物数の測定や銅の形態分析を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
黒ぼく土については、各種酵素遺伝子を標的としたPCR-DGGEと定量PCRの条件を検討し、条件が確立され次第試験を実施する。これにより、酵素活性を担っている土壌微生物の種類と遺伝子の発現量を検討し、攪乱後の酵素活性の多寡が酵素生産微生物数の変動によるものか、酵素発現量に依存するのかを明らかにする。 また、灰色低地土を用いて黒ぼく土と同様の試験を実施し、結果を比較することで、炭素・窒素・リン循環に関わる酵素活性及び酵素酸性微生物群集の攪乱に対するレジリアンスと種多様性の関係が、土壌型によってどのように異なるのか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当初は平成29年度の土壌肥料学会において成果報告を予定していたが、大学業務の為参加を見送った。代わりに12月に所属大学において開催された研究交流会において成果報告を行ったため、学会参加費の支出が抑えられた。学会参加費の一部は、DNA実験が予定よりも早く開始できたためDGGE試薬の購入に充てたが、来年度への繰り越し分については、学会発表費用として使用する予定である。
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