研究課題
本研究課題では、近年、雪氷質量損失が急激に進行しているグリーンランド氷床(Greenland Ice Sheet; GrIS)の質量変化を精度良く推定出来る世界最先端の極域気候モデルの開発を最大の目標に掲げている。当初掲げた研究実施計画では、「1. 極域気候モデルNHM-SMAPの開発、2009年以降の長期計算、及びモデル感度実験の実施」、「2. NHM-SMAPの定式化・計算設定の説明と初期評価結果に関する論文執筆」、「3. モデル精度評価の深化に特化したGrIS機動観測の実施」、及び「4. GrIS機動観測結果とNHM-SMAP計算結果の比較に関する論文執筆」をサブテーマとして設定していた。項目1と2については、既報の通り初年度に達成した。2年度目は、4月に、北西GrISにおいて、共同研究者とともにGrIS機動観測を行い、貴重な現場雪氷物理データの取得に成功した。本観測成果の一部を日本雪氷学会の和文誌「雪氷」に報告した。また、当初の研究実施計画には含んでいなかった下記2項目を達成した:「A1. GrIS表面質量収支計算モデル相互比較プロジェクトSMBMIPへの参加」初年度に発表したNHM-SMAP論文を読んだSMBMIP主催者より参加を打診され、NHM-SMAPによる1980年から現在にかけての長期計算を実施し、結果を提出した。本成果は、IPCC AR6に引用される可能性が高い。「A2. 雲放射がGrIS表面質量収支に与える影響を評価する感度実験システムの構築」2012年にGrISで発生した記録的な大規模表面融解イベントに対する雲の影響がいくつかの論文で指摘されてきたものの、定量的な理解にまでは至っていなかった。本研究では、モデルの中で仮想的に雲をオフにする感度実験システムを構築し、それを用いた影響評価を行った。その結果を論文にまとめて投稿し、現在査読中となっている。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要で記した通り、当初掲げた研究実施計画はほぼ達成した。
極域気候モデルNHM-SMAPにおいて仮想的に雲をオフにする感度実験機能に関する論文が現在査読中となっており、その出版が2019年度にずれ込む見込みとなったため、本研究課題の実施期間を1年延長することとした。3年度目は、その論文出版を期す。また、2年度目に北西GrISで実施した雪氷機動観測の英文報告論文の執筆・出版(和文報告は出版済み)も行う。
現在査読中となっている極域気候モデルNHM-SMAPの感度実験機能に関する論文の出版を確実に行うため、381,575円を次年度使用する。また、既に日本語報告を出版した2018年春グリーンランド氷床機動観測の英文報告の執筆・出版にも充てる。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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