研究課題/領域番号 |
17K12822
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
勝木 陽子 京都大学, 放射線生物研究センター, 特定助教 (00645377)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ICL修復 / ファンコニ貧血 / SLX4 / ユビキチン化経路 / フォーカス形成 |
研究実績の概要 |
ゲノムがDNAクロスリンク損傷を受けると、ファンコニ貧血(FA)経路が活性化し、修復タンパク群が損傷部位に集積(フォーカス形成)する。クロスリンク修復において、損傷を切断するヌクレアーゼ複合体の足場タンパクであり、FA原因遺伝子のひとつであるSLX4/FANCPの損傷部位への集積は、ユビキチン化経路を介することが示唆されているが、その分子機構は明らかになっていない。SLX4アミノ末端のユビキチン結合ドメイン(UBZ4)の欠失変異がファンコニ貧血の発症を引き起こすことから、SLX4のユビキチン結合を介した損傷部位への集積が修復に重要であり、このメカニズムの解明は本疾患の特徴である染色体不安定性や骨髄幹細胞不全の回避に役立つと考えられる。 本分子機構をあきらかにするため、当該年度は次の実験を実施した。 1)SLX4の損傷部位への集積に必要なアミノ酸配列の決定 2)siRNAライブラリースクリーニングによるユビキチン化経路の同定 まず、テロメア局在配列を含むC末のアミノ酸を欠失した短いSLX4にGFPタグをつけ、細胞に発現させ、蛍光イメージングによりクロスリンク損傷後に集積の上昇を検出する系を確立した。UBZ4ドメインへの変異導入により、フォーカス形成が低下したこと、SLX4変異患者細胞におけるクロスリンク損傷感受性を相補できなかったことから、フォーカス形成能がSLX4の修復機能に重要であることを明らかにした。2)のスクリーニングでは、当研究所の安倍昌子博士の協力のもと、SLX4の集積に必要な因子の探索を網羅的に行い、E3ユビキチンリガーゼであるRNF168経路にかかわる複数の因子を同定した。リガーゼ活性を持たないRNF168は、SLX4の損傷部位への集積を回復できなかったことから、RNF168はユビキチン化を介してSLX4の機能を制御することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画はおおむね実施が完了し、順調に進んでいると考えている。当初目標としていたSLX4の損傷部位への集積に必要なユビキチン化経路を特定したので、次年度にSLX4の結合因子であるユビキチン化基質の同定に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に計画していた通り、マススペクトロメトリーによるSLX4の結合因子の同定を進める。siRNAライブラリースクリーニングの結果と照合し、候補因子とSLX4の結合実験やユビキチン化サイトの決定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の研究計画実施にあたり、共同研究者から遺伝子発現ベクターを譲渡してもらうなど、当初予定していた実験にかかる費用の負担が軽減された。また国際学会参加に際し、学内の研究連携基盤による旅費の支援が得られたため、当該年度の旅費にかかる経費を使用しなかった。 平成30年度はSLX4結合因子を網羅的に探索するため、消耗品の必要経費が当初の予定を上回ることが見込まれ、次年度使用額を高額な試薬やマススぺクトロメトリーによる解析費用にも充てる計画である。
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