研究実績の概要 |
X線によりDNA二重鎖切断損傷(DSB)が生じた場合、細胞核内でDNAが巻き付いているヒストンタンパク質の構造が変化することが明らかになっている(Y. Izumi et al., 2015, 2016, 2017)。DSBの修復過程においてヒストンに施される様々な翻訳後修飾がヒストンの構造変化に寄与している可能性が考えられる。平成29年度までに、ヒストンH3の4番目あるいは9番目のリジン残基のメチル化によるヒストンH3の構造変化を調査し、付加するメチル基の位置(4番目あるいは9番目)や数(1-3個)で異なる構造変化が生じることが明らかにした(Y. Izumi et al., 2018a, b)。平成30年度は引き続き、H3のメチル化による構造変化を円二色性分光により調査した。 4、9番目のトリメチル化では、α-ヘリックス構造が減少し、β-ストランド構造が増加する変化が見られたのに対し、36番目のリジン残基のトリメチル化では逆に、α-ヘリックス構造が増加し、β-ストランド構造が減少した。また、その変化の度合いは4、9番目のトリメチル化の場合よりも小さかった。この結果は、修飾位置に依存してH3が異なる構造変化を起こす事を示しており、DNA損傷修復機構を始めとした様々な細胞機能がヒストンの構造変化によって制御されている可能性を示唆する。 平成30年度の成果として、査読付き論文1報(主著)が国際誌に既に掲載されており、1報(共著)が印刷中である。また、1報の査読付き解説記事が国内学会誌に掲載された。
|