研究課題
既に分離培養されている微細藻類株を用い,模擬廃糖蜜蒸留廃水(以下模擬廃水)の色素除去効果を検証した.試験にはH29年度の試験にて最も増殖が早かったChlorella vulgaris(NIES-2170),酸性条件で増殖の見られたParachlorella kessleri(NIES-2159)の2株に加えて好酸性藻類であるChlamydomonas eustigma(NIES-2499)を用いた.10倍希釈した模擬廃水(pH 3)300 mLに各微細藻類を添加し,28℃,16h明期/8h暗期にて14日間培養した.微細藻類の細胞数は3株とも2~5日目にピークを迎えたが,株間の有意差はなかった.また,P.kessleriと C. eustigmaは培養後期に細胞の大きさ(最長部)が最大で50~70%増加していた.これは,微細藻類が増殖よりも細胞内多糖の蓄積を優先させたことが考えられる.この結果は過去の知見と同傾向であり(Noguchi et al. 2021),微細藻類が都市下水処理水だけでなく廃糖蜜蒸留廃水の処理に利用できる可能性を示した.色素除去効果は,紫外可視分光法を用いて評価した.模擬廃水と各微細藻類懸濁液の紫外吸光スペクトルより,模擬廃水中の着色を260 nmで評価することを決定した.培養期間中の着色除去率はC. vulgaris,P.kessleri,C. eustigmaでそれぞれ0.6~9.7%,0.2~7.5%,0.2~11.2%であり,微細藻類間の有意差はなかった.また,これまでに環境水から分離できた微細藻類株を消化脱離液でスクリーニングし,有機物負荷の高い条件下にて増殖可能な微細藻類を選抜した.これにより高有機物負荷および酸性条件下(pH 2.5~3)にて増殖する株の確立に成功した.これらの株は,pH未調整の廃糖蜜蒸留廃水の処理に有望と思われる.
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