研究課題/領域番号 |
17K12833
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
家田 曜世 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (40761078)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ノンターゲット分析 / ソフトイオン化 / 精密質量分析 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度の課題であった測定データの再現性を改善するために、装置の基礎データを蓄積し、ハードウェアの特徴を詳細に調べることで、再現性の高いデータをとるための条件を確立した。具体的には、イオン源温度の設定値と実測値の差、試薬ガスの種類・流量、イオン源温度による真空度の変化、チューニングの有無による感度の変化等のデータ取りを行い、本装置において再現性の高いデータ取りが可能となる測定条件を決めた。 次に、決定した条件を用いて、試薬ガスの種類と流量(0.1~3.5 mL/min)、イオン源温度(設定OFF,200℃,280℃)、イオン化電圧(20~150 eV)等、ソフトイオン化に関わる様々なパラメーターを変化させ、有機ハロゲン化合物混合標準溶液を測定した。試薬ガスは、不活性ガス(Ar, He)のほか、化学イオン化法の試薬ガスとして一般的に使われているメタン(CH4)を用いた測定も行った。得られた各化合物の質量スペクトルを詳細に解析し、分子イオン(負イオン)の強度を調べた結果、不活性ガスを用いたソフトイオン化では、イオン源温度が分子イオン強度に大きな影響を及ぼすことがわかり、イオン源の温度設定をOFF(測定中の実測値:約80~190℃) にした際に、PCB209やOCDF、OCDDなどの高塩素化体の分子イオン強度がもっとも高くなることが明らかとなった。得られた最適条件をGC×GC-HRTOFMS によるハウスダスト粗抽出液分析に試験的に適用し、環境試料ノンターゲット分析における不活性ガスによるソフトイオン化法の有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度の課題として挙げていた測定データの再現性を改善することが出来た。決定した条件を用いて、ソフトイオン化に関わる様々なパラメーターを変化させ、約50種類の条件で有機ハロゲン化合物混合標準溶液を測定し、有機ハロゲン化合物の分子イオンの強度を調べた結果、不活性ガス(Ar, He)を用いたソフトイオン化では、イオン源温度が分子イオン強度に大きな影響を及ぼすことがわかり、イオン源の温度設定をOFFにした際に、もっとも高塩素化体の分子イオン強度が高くなることが明らかとなった。得られた不活性ガス(Ar)によるソフトイオン化の最適条件をGC×GC-HRTOFMS によるハウスダスト粗抽出液分析に試験的に適用し、その有用性を評価するとともに、学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、不活性ガスによるソフトイオン化条件の検討を行い、得られた最適条件1つをGC×GC-HRTOFMSによるハウスダスト粗抽出液分析に試験的に適用した。今後は、3種類の試薬ガス(Ar, He, CH4)を用いて、それぞれの最適条件を用いてハウスダスト粗抽出液を測定する。従来の電子イオン化(EI)法でも同様の試料を測定し、各データを比較しながら詳細にデータ解析を行うことで、各イオン化法の特徴を理解し、環境試料ノンターゲット分析における目的に応じた活用方法を整理する。また有機ハロゲン化合物混合標準溶液とハウスダスト粗抽出液の測定データを比較し、環境試料マトリックスがソフトイオン化の感度や安定性、耐久性等に与える影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、当初の研究計画より進捗が遅れていたため、もともと本年度に予定していた国際学会での発表を延期した。その結果、本年度は旅費の使用額が予定よりも少なくなった。次年度は、この予算を国際学会で発表を行うために使用する計画である。
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