研究課題/領域番号 |
17K12834
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
菅原 一輝 成蹊大学, 理工学部, 助教 (60792405)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ファイトレメディエーション / ハクサンハタザオ / カドミウム / 亜鉛 / 元素動態 |
研究実績の概要 |
平成29年度は①ハクサンハタザオ根より排出される分泌物の同定とその重金属溶出作用の検討、および②ハクサンハタザオをはじめとする様々な超蓄積植物が重金属に曝露した際の植物体内における必須元素動態について多変量解析を用いた検討、③PETISによるRIを用いたリアルタイムの重金属動態解析を行った。 ①ハクサンハタザオを前培養条件を変えた水耕栽培によって根分泌物を収集し、収集した溶液を用いてまず重金属の溶出試験を行った。前培養時に鉄を欠乏させた状態の分泌物では、コントロールに比べてカドミウム・亜鉛どちらも溶出量が有意に上昇することが確認された。また、この時の分泌物をTOF-MSによって分析したところ、比較的高分子の分泌物が含まれていることが確認された。分子の質量数よりフラボノイド系の化学構造を持つ分泌物が重金属溶出を促進している可能性が本実験より示唆された。本研究結果について国際会議での発表を1件実施し、現在論文投稿準備を行っている。 ②重金属蓄積植物における重金属無毒化機構を解明するために、カドミウム・亜鉛を吸収・蓄積するハクサンハタザオおよびヒ素を吸収・蓄積するモエジマシダの2種について重金属曝露時の植物体内における必須元素の解析を行った。モエジマシダに関しては非ヒ素蓄積性植物のセイヨウタマシダとも比較検討を行った。重金属蓄積性植物の場合、植物の生理活性に関わる元素と重金属濃度は正/負の相関を取る傾向にあった。一方で、非蓄積性植物の場合は曝露する重金属濃度によって必須元素濃度が大きく変動する傾向にあった。この研究結果について、国内学会で1件の発表を行い、論文を1報発表した。 ③PETISによるハクサンハタザオの亜鉛・カドミウムの植物内の動態解析では、両元素の移動の像を得ることができた。研究結果について、国際会議で1件の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験装置の都合上、当初の計画と実験計画の入れ替えがあったものの、実施した研究に関して予想以上の結果が得られた。また、その内容について学会および論文発表を複数件行い、成果発表も順調に進行したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は実験装置の都合上実施できなかった、LA-ICP-MSによるハクサンハタザオ根圏の重金属分布の検討を実施する。また、超蓄積植物が重金属に曝露した際の植物体内における必須元素動態について多変量解析を用いた検討では、他種の超蓄積植物および非蓄積植物に対しても比較・検討を行うことで、超蓄積植物の持つ植物生理学的特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では初年度に東北大学が持つLA-ICP-MSによって、植物根圏の重金属局在性マッピングを行う予定であったが、先方の装置の不調で実施出来なかったため、それに伴う実験実施に必要な消耗品および実験を行うための滞在費(旅費)を次年度に繰り越すこととなった。 代わりに次年度で行う実験を前倒しして実施したため、計画全体の収支状況に変更は無く、予定通り実験を実施する予定である。
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