本研究は、ハビタットが著しく分断されている都市景観に生息する中型食肉目が、どのような生息地ネットワークを形成しているのか明らかにすることを目的としている。とくに東京に生息するタヌキを対象として、生息地(緑地)間の個体の交流について調べることで、生息地ネットワーク構造を明らかにする。 平成29年度は、東京都23区の緑地と東京郊外の緑地でタヌキの糞から遺伝子を得るためのサンプル収集を主におこなった。緑地ごとのタヌキの遺伝子を採取し、緑地間の比較をおこなうことで、どの程度交流があるのか明らかにできると考えている。 タヌキはタメフンと呼ばれる、同じ場所に排糞する習性があることから、まずは各緑地でタメフンの探索をおこなった。都心部では、東京大学小石川植物園、代々木公園、砧公園、光が丘公園、石神井公園などにおいてタメフンの探索をおこなった。東京郊外では、八王子市や町田市、府中市、神奈川県横浜市などの緑地でタメフンの探索をおこなった。発見されたタメフンには定期的に訪問し、可能な限り新鮮な糞を採取した。採取した糞は、エタノールに浸し、-20℃で保存した。これらのサンプルは今後の遺伝子分析に利用する予定である。 また、平成28年度までに研究代表者が別途採取しておいた糞サンプルを共同研究機関に送付し、現在遺伝子分析を進めている。平成29年度に採取した糞サンプルは、これらのサンプルに追加されて、今後分析が進められる予定である。
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