研究課題/領域番号 |
17K12845
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
白井 正樹 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (30758660)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光害 / 動物生理 / 海洋保全 / 海鳥 / 誘引 / ステレオ撮影 / 海洋生態系 |
研究実績の概要 |
本研究では、実験的アプローチや野外観測を通じて、海鳥が照明に誘引される直接的なメカニズムを明らかにすることを目的としている。照明に誘引されることが知られているオオミズナギドリの巣立ち雛と、誘引されないオオミズナギドリの親鳥およびウミネコを対象に、本年度は野外観測を行い、対象種の行動・形態データの取得を行った。2年目である本年は、昨年度調査した新潟県粟島、村上沿岸のほか、オオミズナギドリが繁殖する有人島である伊豆諸島の利島も調査地に加え、観測を行った。 新潟県の村上沿岸では、ウミネコの親鳥4個体にGPSデータロガーを装着し、そのうち3個体から移動軌跡を取得した。ウミネコは、海上での採餌を行うほか、三面川上流の水田など内陸も日中の採餌場所として利用していた。 10月下旬には粟島にて、11月上旬には利島にて、それぞれ集落内のオオミズナギドリ巣立ち雛の落鳥調査を行ったところ、巣立ち雛の回収数は粟島で54個体、利島で27個体であった。それぞれの巣立ち雛の回収地点で最も近い照明を確認したところ、相対的に蛍光ランプが多かった。島内の街灯の光スペクトルを計測して比較すると、蛍光ランプは他の照明より紫外領域を多く含んでおり、オオミズナギドリの巣立ち雛は紫外線を含む光源に誘引されやすいことが考えられた。また、粟島のオオミズナギドリの巣立ち雛について、翼面計測と性判別を行った。その結果、雌雄ともに親鳥に比べて翼面荷重が大きく、飛行性能が低いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は粟島の落鳥数が著しく少なかったため、今年度は粟島に加えて伊豆諸島の利島も調査地に加えた。その結果、両方の島で落鳥に関するデータが得られたことから、当初予定していなかった繁殖地間の比較も含めた解析が可能となった。以上のことから、落鳥観測が行えなかった初年度の遅れを取り戻したと考えられ、研究全体としては概ね順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、オオミズナギドリ繁殖地および集落で実験的に照明を設置し、紫外線を含む光源による誘引への影響を評価する。また、照明の存在下でのオオミズナギドリの雛の体内リズムの発達と乱れについて計測する。得られたデータの解析を進め、オオミズナギドリの巣立ち雛に光誘引が生じる生理的なメカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査が予定よりも少ない回数で実施でき、旅費、滞在費が想定を下回ったため。次年度使用額は、オオミズナギドリ繁殖地で行う実験的な光照射のために必要な、照明機材の購入予算として使用する。
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