研究課題/領域番号 |
17K12846
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
望月 友貴 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (90546087)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオマス / 石炭 / タール / 細孔 / 蒸着 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、劣質炭素資源の熱分解で生成した炭化物の細孔内に、同じく熱分解で生成したガス状タール由来の炭素質物質を完全充填させた炭素/炭素複合体(高収率/高発熱量/高強度化した炭化物)を調製し得る最適条件の提示と加熱時の反応性の評価を行ない、細孔制御に基づいた劣質炭素資源の高効率アップグレーディング法を開発することを目的とする。 平成29年度は、ガス流通式石英製固定床反応器を用いて、木質バイオマスであるオガ屑の低速/急速熱分解時のチャー、タール、ガスの分配挙動を調べた。本研究で使用した反応器による急速熱分解では、チャーとタール収率は300oCで極大値を示した後に温度の増加に伴い減少する傾向にあった。一方、低速熱分解ではチャー収率は300から550oCまでに50から25wt%へ減少したのに対して、タール35から55wt%に増加した。この時のチャーの細孔性状をN2吸着法で調べたところ、表面積は温度の増加に伴い増大し、500-550oCで極大値(360m2/g)を与えた後に減少する傾向にあった。一方、急速熱分解チャーの表面積の発達は、低速処理と比較し小さいものであった。この低速熱分解で調製した550oCチャーとタールを室温で混合し、共炭化するとタール混合比の増加に伴い炭化物収率は>20wt%増加した。また、表面積は5~80m2/gへ減少し、チャー中の細孔内にタール由来の炭素質物質を充填可能であった。さらに、オガ屑の低速熱分解とチャーへのタール蒸着部から構成される石英製反応器を用い、蒸着温度を変化させて熱分解時に生成したガス状タールを上記チャーに蒸着させたところ、炭化物の収率を10~20wt%増加させることができた。 以上より、オガ屑の熱分解により調製したチャーの細孔内にタール由来の炭素質物質を充填させることで、炭化物収率を増加させた炭素/炭素複合体を製造可能であることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、木質バイオマスであるオガ屑の低速/急速熱分解を行ない、タール生成量、チャー収率、チャーの表面積が最大となる熱分解条件の解明を行ない、その結果に基づき、タールとチャーの混合物の共炭化ならびにチャーへのガス状タールの蒸着処理を行なうことで、チャー細孔内にタール由来の炭素質物質が充填し、炭化物収率を増大させることが可能であることを見出した。このように、本研究は順調に進展しており、平成29年度に掲げた目標をほぼ達成している。
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今後の研究の推進方策 |
成30年度は、前年度の成果に基づき木質バイオマスチャーへのガス状タール蒸着による炭化物収率の更なる向上を検討すると共に、他の多孔質炭化物(石炭、他のバイオマス種)の細孔内へのタール由来炭素質物質の充填により高収率、高発熱量、高強度の炭素/炭素複合体の調製条件の解明を行なうことを目標に掲げる。具体的には、木質バイオマスチャーや石炭炭化物の細孔内に熱分解タールを蒸着、充填させた炭素/炭素複合体を高収率で調製し得る最適条件を主に空間速度、蒸着温度の観点から明らかにし、その発熱量を燃研式自動ボンベ熱量計で分析する。また、調製した炭素/炭素複合体をブリケット化し、その炭化処理で得られた成型体の強度を圧潰試験法により調べる。以上より、劣質炭素資源からの高発熱量で高強度の炭素/炭素複合体を高収率で製造可能な最適条件の提示を行なう。 次に、種々の炭化物から調製した炭素/炭素複合体の燃焼とガス化反応性の評価を熱天秤により調べ、燃焼・ガス化雰囲気(空気/CO2/H2O)下での加熱時の熱重量減少挙動の結果から、反応性を評価する。また、昇温脱離(TPD) (一定の昇温時のガス種の生成速度を定量)法/O2吸着TPD法により析出炭素構造やガス化活性点を脱離するCO、CO2生成速度の観点から評価し、複合体の炭素構造、活性サイト、細孔性状が燃焼/ガス化反応性に及ぼす影響を定量的に明らかにすると共に支配因子の提示を行ない、炭素/炭素複合体の加熱時の反応性/反応機構を提示する。 以上の結果を総合して、タールの蒸着処理による劣質炭素資源の高効率アップグレーディング法の開発の原理基盤を構築する
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の都合上、支払が翌年度にまたがった物品があるため。平成29年度内に購入予定だった物品は全て納品済みであり、平成30年度の研究は計画の変更なしで進めることが出来る
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