研究実績の概要 |
本申請研究では、劣質炭素資源の熱分解で生成した炭化物(チャー)細孔内に同じく熱分解で生成したガス状タール由来の炭素質物質を充填させた炭素/炭素複合体を高収率で調製し得る最適条件の提示ならびに複合体の特性評価を行ない、劣質炭素資源の高効率アップグレーディング法の原理基盤を開発することを目的とする。 本年度は、まずおが屑の熱分解チャー細孔内に熱分解で生成したガス状タール由来の炭素質物質を充填させ、高収率で複合体を調製し得る条件の探索を行なった。熱分解部とタール蒸着部から構成されるガス流通式石英製固定床反応器を用い、蒸着温度(100~300oC)をパラメーターとして変化させた。その結果、温度の低下に伴い収率は増加し、150oCでハンドリング性のよい複合体が高収率(35wt%増)で調製可能であった。上記実験時の各フラクション収率の変化から、収率増加は主に重質タールの蒸着に基因した。また、N2吸着により処理前後の細孔性状を調べた結果、複合体では細孔が消失していたことから、本手法によりチャー細孔内にタールを充填させることが可能であることが見出された。上記最適条件で、蒸着処理(VD)を2~10回(VD2~VD10)繰り返し実施したところ、複合体収率は処理回数の増加に伴い増大し、その収率は350wt%増加した。異なる処理回数の複合体を成型し、900oCまで炭化させた際の成型炭化物の強度を調べた結果、VD6,VD8で最も高い強度が認められ、VD10では蒸着したタール由来炭素質物質の溶融性過多により強度低下が生じた。前者の強度は原料炭(MF,3.1log(ddpm))単味から調製したコークスよりも大きい値であった。次に、原料炭にVD10を配合してコークス化の検討を行なったところ、配合率60-80wt%で原料炭やVD10のみから調製した炭化物よりも大きい強度を有するコークスを製造可能であった。
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