研究実績の概要 |
食品加工場などから年間数万tが廃棄されている海藻残渣や, 沿岸域に漂着する流れ藻の持続可能な有効活用法の開発は重要な研究課題である。申請者は, 複数種の海藻藻体を分解することができる新種のSaccharophagus属細菌Myt-1 株を単離することに世界で初めて成功した。本研究の目的は, Myt-1 株が産生する海藻分解産物の有効性を検証し, Myt-1 株から海藻多糖分解酵素をクローニングしてそれらの特徴を解析することである。平成29年度には, 各種藻体に対する分解活性の確認とその分解に必要な最小栄養素の探索に加えて, 富山湾における海藻分解菌の分布状況を, 分子生物学的手法を用いて検出する方法を確立した。平成30年度には, これまでに4例しか報告例がないPL family18のアルギン酸リアーゼの単離に成功した。平成31年度の実施状況について以下に報告する。 1. AlgMytEの詳細な特性解析を行った。その結果, AlgMytEは1M NaCl存在下でも最大活性の75%の活性を示したことから高い耐塩性を持っていた。また, 0.01%の様々な界面活性剤存在下でも無添加時の60%以上の活性を保持していたことから, 高い界面活性剤耐性を持つと考えられた。さらに, TLCを用いてAlgMytEによるアルギン酸ナトリウムの分解産物を調べた結果, 3-5糖を主に生成するとともに, 微量ながら2糖も産生した。このような分解様式を示すアルギン酸リアーゼはこれまでに報告例がない。 2. 平成29年度に確立した富山湾における海藻分解菌の群集構造を調べるPCR-DGGE法を用いて, その季節性や周年性を検証した。その結果, 採取する年度に関わらず, 同じ月の群集構造は非常に似ていたことから, 富山湾沿岸の海藻分解菌の群集構造は緩やかな季節変動をしながら, 周年性を持つことが推察された。
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