研究実績の概要 |
本研究では、機械的な曝気を要する従来の窒素含有廃水処理法に代わり、微細藻類と硝化菌を共生させ、光合成により生成された酸素を利用し反応を進める省エネルギー型処理法の確立を目指している。硝化菌は光照射により強い阻害を受けるため、流動担体に硝化菌を固定化することで光による影響を緩和できないかと考えた。 平成29年度は、まず、硝化菌の固定化に適した流動担体の選定を行った。人工廃水を用いて、異なる2種類の流動担体 (スポンジ担体、中空円筒担体)に硝化菌を順養・固定化し、各担体に付着する乾燥重量ベースの菌体量測定と走査型電子顕微鏡による微生物の固定化状態の観察を実施した。両担体および分散状の硝化菌を種菌として0 (暗所), 100, 450, 1600 (日中の太陽光程度) μmol photons m-2 s-1の異なる光照射条件下で、人工廃水を添加し硝化活性テストを実施した。その結果、分散状の硝化菌を用いた場合450 μmol photons m-2 s-1以上の光照射条件で硝化活性が低下した一方で、スポンジ状担体を用いた場合、1600 μmol photons m-2 s-1でも暗所と同程度の活性が維持された。これは、スポンジ担体は立体格子状であり、硝化菌のバイオフィルムが担体の外側から内部にかけて層状に形成するため、光を遮断し易いためと考えられる。 現在、屋内で光条件を1,000 μmol photons m-2 s-1 (明暗周期: 12時間毎)に設定し、流動担体 (スポンジ担体)に固定化後または分散状の硝化菌と微細藻類を混合した共生プロセスによる実廃水処理試験を実施中である。実廃水には、メタン発酵消化液の脱水ろ液を2倍希釈したものを用いている。今後は、屋内試験での担体の有無による硝化処理性能を比較・評価し、屋外の自然環境下で実廃水処理を実施し、提案プロセスの有用性を評価する。
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