研究実績の概要 |
本研究では、多孔質膜と発色試薬を組み合わせて、様々なポリマーに対する分解微生物の迅速な探索・評価法【ワンポット法】を開発した。2019年度に開催予定であった成果発表の機会が2020年度に延期となったため補助事業期間を延長したが再度延期となったため、以下の研究成果について他の機会での発表を行った。 オレフィン系ポリマーを用いて発泡剤や架橋剤を用いない多孔質シートを作製することが困難であったが、安定的な作製方法を検討した結果、2019年度に難分解性の足場材料(ガラス繊維ろ紙)にポリイソプレン(PIP)をコーティングした多孔質膜の作製に成功した。12 wellマイクロプレートを用いて多孔質膜にコーティングしたポリマーの分解性試験を行い、その分解性をGPCで評価した。その結果、コントロールではPIPの培養0日目の数平均分子量(Mn)は286,391、重量平均分子量(Mw)は940,128であったのに対し、培養2週目の数平均分子量(Mn)は259,581、重量平均分子量(Mw)は783,133であり、顕著な生分解性は確認されなかった。一方、当研究室で単離した放線菌を播種した場合、培養0日目の数平均分子量(Mn)は264,295、重量平均分子量(Mw)は835,014であったが、培養2週目の数平均分子量(Mn)は41,829、重量平均分子量(Mw)は269,213となり、PIPの顕著な低分子化が明らかとなった。ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)についても同様の評価を行った結果、培養2週目からポリマーの分解が確認され、培養4週目にはほぼ完全に分解された(GPC:ピーク不検出)。本手法により、多孔質化した様々なポリマーを用いた迅速な分解性評価が可能となった。今後、開発したワンポット法を用いて様々なポリマーに対する分解性評価および分解微生物の探索を進めていく方針である。
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