• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

乾燥地における持続可能な水資源管理のための多基準社会的意思決定法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K12855
研究機関東京大学

研究代表者

秋山 知宏  東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 客員共同研究員 (90452523)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード乾燥地 / 持続可能性 / 水資源管理 / 社会的意思決定 / 多基準意志決定法 / マルチエージェントモデル
研究実績の概要

平成30年度には,マルチエージェントモデルを用いた多基準社会的意思決定法の枠組の開発に焦点を当てた.具体的には,以下の4つの作業を行った;①個人や集団の行動様式のルールベース化,②人間活動を再現するためのマルチエージェントモデルの開発,③マルチエージェントモデルと水循環モデルならびに陸域生態系モデルの結合,④開発した結合モデルの検証.①については,中国西北地方の黒河流域における現地調査の結果に基づいて,政策を含む社会経済,気候変動,水循環,生態系などの情報に対する個人や集団の行動様式をルールベース化した.②については,人工知能(AI)技術を応用してマルチエージェントモデルを開発し,アンケート調査の結果に基づいて,人間活動の再現性を検証した.チューニングを完全に終えていない段階であるが,現段階でも80%以上の精度で再現できている.③については,水循環への影響評価には,河川流量から地下水動態を含めて検証済みである,分布型水循環モデルを用いた.この内部に,植物の生育・枯死を計算できる植生動態モデルを構築した.④については,月単位の河川流量ならびに地下水位,葉面積指数,土地利用や産業構造,部門別の取水源と取水量などの観点から検証した.実測値と計算値の誤差を相関係数を指標として検証したところ,0.7以上の値が得られている.今後もチューニングを施す予定であるが,本研究で開発したモデルの枠組の妥当性が検証されたと考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

予定していた論文出版数を大幅に上回る数の論文を出版できたため.現地調査で得られた豊富なデータに基づき,国際的に競争力の高い学術誌において研究成果を発表できた.

今後の研究の推進方策

シミュレーションモデルを用いて,中国の乾燥地にあって水資源管理国家政策のパイロット流域となっている黒河流域を対象としたケーススタディ(シナリオ解析)を行う.先ず,大規模超並列計算機(現有機器)上に,水循環や生態系や社会経済についての動的な環境を水資源管理政策の代替案ごとに設定する.そこに多数の自律的なエージェントを配置する.将来の水資源管理政策の変化に対する行動ルールに従って各エージエントの挙動をシミュレートするとともに,水循環や陸域生態系ならびに社会経済的動態をシミュレートする.創発される社会的特性と,それによる水循環や陸域生態系への影響ならびに社会経済への影響を,代替案ごとに明らかにする.その上で,現行の政策を維持した場合と比較して,特に気候変動や流域水収支,植生分布や炭素固定量,各地域の産業構造や所得格差など,評価基準ごとに代替案間の違いを明らかにする.
以上から,マルチエージェントモデルを用いた多基準社会的意思決定法の枠組の妥当性を,実証的に考察する.従来の多基準意思決定法との違いを方法論的観点から一つずつ提起し,両者の特性と限界を体系的に取り纏めるとともに,今後の課題を明らかにする.

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は,旅費が当初予定していた額よりも少なく済んだためである.
使用計画については,2019年度には開発したモデルによるシナリオ分析を予定しており,大規模超並列計算機サーバへのディスク容量追加費用に充てる.

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (5件)

  • [国際共同研究] Chinese Academy of Sciences(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Chinese Academy of Sciences
  • [雑誌論文] Application of the Ecological Network Analysis (ENA) Approach in Water Resource Management Research: Strengths, Weaknesses, and Future Research Directions2019

    • 著者名/発表者名
      Kharrazi, A., Akiyama, T.
    • 雑誌名

      Water Conservation, Recycling and Reuse: Issues and Challenges

      巻: 1 ページ: 259- 276

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/978-981-13-3179-4_14

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Resilience Thinking and Sustainable Development2019

    • 著者名/発表者名
      Kharrazi, A., Akiyama, T., Yarime, M.
    • 雑誌名

      Encyclopedia of Sustainability in Higher Education

      巻: 1 ページ: 1-4

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/978-3-319-63951-2_324-1

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Use of Water Balance and Tracer-Based Approaches to Monitor Groundwater Recharge in the Hyper-Arid Gobi Desert of Northwestern China2018

    • 著者名/発表者名
      Akiyama, T., Kubota, J., Fujita, K., Tsujimura, M., Nakawo, M., Avtar, R., Kharrazi, A.
    • 雑誌名

      Environments

      巻: 5 ページ: 55

    • DOI

      https://doi.org/10.3390/environments5050055

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The impact of ecological restoration projects in dry lands: data-based assessment and human perceptions in the lower reaches of Heihe River basin in China2018

    • 著者名/発表者名
      Zhou, T., Akiyama, T., Horita, M., Kharrazi, A., Kraines, S., Li, J., Yoshikawa, K.
    • 雑誌名

      Sustainability

      巻: 10 ページ: 1471

    • DOI

      https://doi.org/10.3390/su10051471

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] A Study on the Groundwater Contamination by the Agriculture Fertilizer Inputs and its Spatial Distribution Pattern in the Zhangye Basin, Northwest China2018

    • 著者名/発表者名
      Bandara, A., Akiyama, T.
    • 雑誌名

      Bhumi, The Planning Research Journal

      巻: 6 ページ: 18-22

    • DOI

      http://doi.org/10.4038/bhumi.v6i1.35

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 共生社会と「自己」の探求:求められる人間観2018

    • 著者名/発表者名
      増田敬祐. 秋山知宏. 上柿崇英. 中川光弘
    • 雑誌名

      共生社会システム研究

      巻: 12 ページ: 80-84

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An Insight into the Implementation of Land Use Right Transfer Policy in China: A Case Study in the City of Zhangye2018

    • 著者名/発表者名
      Fan, H., Akiyama, T., Kharrazi, A.
    • 雑誌名

      International Journal of Agricultural Resources, Governance and Ecology

      巻: 14 ページ: 105-121

    • DOI

      http://doi.org/10.1504/IJARGE.2018.093961

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Toward creation of an Integral Science: Meaning of integration2018

    • 著者名/発表者名
      Akiyama, T.
    • 学会等名
      24th International Sustainable Development Research Society Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 文明の転換期をどう生きるのか:本来性の自覚と実践2018

    • 著者名/発表者名
      秋山知宏
    • 学会等名
      地球システム・倫理学会第14回学術大会
  • [備考] ResearchGate

    • URL

      https://www.researchgate.net/profile/Tomohiro_Akiyama2

  • [備考] ORCID

    • URL

      http://orcid.org/0000-0002-6720-8995?lang=en

  • [備考] publons

    • URL

      https://publons.com/researcher/1373040/tomohiro-akiyama/

  • [備考] Google Scholar

    • URL

      https://scholar.google.com/citations?hl=en&user=jbHWbG8AAAAJ

  • [備考] LinkedIn

    • URL

      https://www.linkedin.com/in/tomohiro-akiyama-a1759636/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi