研究課題
平成30年度には,マルチエージェントモデルを用いた多基準社会的意思決定法の枠組の開発に焦点を当てた.具体的には,以下の4つの作業を行った;①個人や集団の行動様式のルールベース化,②人間活動を再現するためのマルチエージェントモデルの開発,③マルチエージェントモデルと水循環モデルならびに陸域生態系モデルの結合,④開発した結合モデルの検証.①については,中国西北地方の黒河流域における現地調査の結果に基づいて,政策を含む社会経済,気候変動,水循環,生態系などの情報に対する個人や集団の行動様式をルールベース化した.②については,人工知能(AI)技術を応用してマルチエージェントモデルを開発し,アンケート調査の結果に基づいて,人間活動の再現性を検証した.チューニングを完全に終えていない段階であるが,現段階でも80%以上の精度で再現できている.③については,水循環への影響評価には,河川流量から地下水動態を含めて検証済みである,分布型水循環モデルを用いた.この内部に,植物の生育・枯死を計算できる植生動態モデルを構築した.④については,月単位の河川流量ならびに地下水位,葉面積指数,土地利用や産業構造,部門別の取水源と取水量などの観点から検証した.実測値と計算値の誤差を相関係数を指標として検証したところ,0.7以上の値が得られている.今後もチューニングを施す予定であるが,本研究で開発したモデルの枠組の妥当性が検証されたと考えられる.
1: 当初の計画以上に進展している
予定していた論文出版数を大幅に上回る数の論文を出版できたため.現地調査で得られた豊富なデータに基づき,国際的に競争力の高い学術誌において研究成果を発表できた.
シミュレーションモデルを用いて,中国の乾燥地にあって水資源管理国家政策のパイロット流域となっている黒河流域を対象としたケーススタディ(シナリオ解析)を行う.先ず,大規模超並列計算機(現有機器)上に,水循環や生態系や社会経済についての動的な環境を水資源管理政策の代替案ごとに設定する.そこに多数の自律的なエージェントを配置する.将来の水資源管理政策の変化に対する行動ルールに従って各エージエントの挙動をシミュレートするとともに,水循環や陸域生態系ならびに社会経済的動態をシミュレートする.創発される社会的特性と,それによる水循環や陸域生態系への影響ならびに社会経済への影響を,代替案ごとに明らかにする.その上で,現行の政策を維持した場合と比較して,特に気候変動や流域水収支,植生分布や炭素固定量,各地域の産業構造や所得格差など,評価基準ごとに代替案間の違いを明らかにする.以上から,マルチエージェントモデルを用いた多基準社会的意思決定法の枠組の妥当性を,実証的に考察する.従来の多基準意思決定法との違いを方法論的観点から一つずつ提起し,両者の特性と限界を体系的に取り纏めるとともに,今後の課題を明らかにする.
次年度使用額が生じた理由は,旅費が当初予定していた額よりも少なく済んだためである.使用計画については,2019年度には開発したモデルによるシナリオ分析を予定しており,大規模超並列計算機サーバへのディスク容量追加費用に充てる.
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (5件)
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http://orcid.org/0000-0002-6720-8995?lang=en
https://publons.com/researcher/1373040/tomohiro-akiyama/
https://scholar.google.com/citations?hl=en&user=jbHWbG8AAAAJ
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