研究課題/領域番号 |
17K12857
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
尾下 優子 神戸大学, 海事科学研究科, 講師 (50709227)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域産業連関表 / ステークホルダー / 社会経済性 |
研究実績の概要 |
環境技術・システムの導入による地域経済の活性化モデルの構築のためには、技術・環境面の評価・設計だけでなく、その技術が地域の社会経済にどのような影響を与えるのかを評価軸に加えた、地域が受容可能な技術設計が必要である。本研究では、環境技術の産業・技術の波及効果を分析する産業連関分析を発展し、技術・システムの社会経済性を可視化するモデルを提案することと、その結果を地域のステークホルダーに提示し、選好を調査することにより、受容性の要因分解や社会経済性への感度分析などを行うことを目的としている。 本研究は大きく分けて、(1)技術・システムの社会経済性を評価可能な産業連関表の作成、(2)フロー解析手法、ステークホルダー特定手法の確立、(3)技術・システムシナリオの分析結果の受容性の評価、技術選択の要因分析の3 つのフェーズから成り立っている。29年度の実施内容は以下の通りである。 (1)公開統計データを基にした種子島のa)産業連関表を作成し、より詳細なb)産業連関表の作成のために、二次利用申請が可能かつ必要な個票データの利用申請を行い、申請者がこれまで入手したヒアリングデータ等も参照し作表を進め、システム工学の専門家の協力を得て、同表と連結する新規技術・システムのプロセスデータの作成に従事した。 (2)技術・システム導入の社会経済的な影響のフローを解析する手法と、それによるステークホルダーの特定手法を開発し、ネットワーク分野の専門家と議論を行った。 (3)社会経済性に基づく技術・システムの受容性を地域のステークホルダーや住民に調査するための方法や分析手法の検討を行い、実際にステークホルダーとなり得る対象に研究成果の解説・意見交換を行った。 上記の実施内容は、次年度以降の研究実施に向けた基礎づくりとして非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術・システムの受容性を分析、援助するために、数種類の産業連関表の作表に取り組み、それぞれを用いた技術・システムの社会経済性の評価結果の差についての比較分析を行っている。また、その結果を学会等で発表し、専門家らと意見交換をしつつ、手法等の再検討も行っている点で、今年度の実施目標を達成している。 また、ケーススタディを行う地域においても、様々な主体に対して、セミナーや意見交換会などを行い、受容性の分析を行うための基礎作りにも取り組んでいる点で、次年度以降の実施の準備が十分に整えられている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特定地域だけでなく、その他の地域でも展開可能なモデルの構築を目指し、より簡便に作成、分析可能かつ地域の受容性に対し致命的な影響を与えない産業連関表および分析モデルの設計、比較分析等を行う。 この際に、技術情報を損なわないために、システム工学の専門家らと十分な議論を行い、住民の受容性を測る方法を検討するために、社会学分野の専門家らからも助言を受ける予定であり、対象地域についても、現在の対象地域とは別の特徴を持つ地域に拡大する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、国際学会での発表よりも国内の研究者や有識者、地域のステークホルダーとの打ち合わせや議論を優先させたため、当初予定していた国際学会への参加がなくなり、当該助成金が生じた。
次年度において、現地調査のための旅費や調査に必要なノートパソコンなどの購入費に充てる予定である。
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