本研究は、WIOD(: World Input-Output Database)を主体として作成される環境拡張型国際産業連関表を用いて、各産業の方向性を考慮したサプライチェーンネットワークを形成し、環境負荷集約的な国際産業クラスターの抽出を行うことで、世界全体でのより低負荷な社会の実現に向けての環境協定や技術協力、R&Dなどを行うことを目的としている。方向性を残しつつ国際産業クラスターの抽出が行われれば、例えば同一クラスターに所属する産業として「小麦(日本)(輸出側)」「製造業(台湾)(輸入側)」などが抽出され、これらの産業に関係する政策を行うための2国間協定の提案などに話をつなげることができるようになると考えられる。 当該年度において、日本の貿易情報を内包した国際産業連関表を基にした分析を見据えて、サプライチェーン全体に占める国際間取引の割合を算出することで、各国の開放度と経済発展の具合の相関を計る研究枠組みの構築に取り組んだ。例えば1965年から2000年にかけての農林水産業においては、開放度が進むほど経済発展の度合いが大きくなっていると示唆された。こうした分析結果を、方向性を加味した産業連関分析に盛り込んでいく必要がある。一方で、産業連関表の種類によってはその解像度の影響(産業のバスケットとして扱うため部門によっては詳細な製品項目がない場合がある)で、中間財が「どこからどこへ向かったのか」について具体的に想定できていないケースもあり、引き続き検討すべき課題が残される。
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