研究課題/領域番号 |
17K12862
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
柴田 裕希 東邦大学, 理学部, 准教授 (40583034)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地熱開発 / 持続可能性アセスメント / 再生可能エネルギー / 社会影響評価 / 合意形成 |
研究実績の概要 |
本研究は、平成29年から平成32年までの4カ年の計画で、国内の地熱開発に関する手続統合型持続可能性アセスメントの手法を検討するために、3段階で実施展開する。その二年目にあたる平成30年度は、研究の第1段階の調査結果である、国内の地熱ポテンシャルの確認されている潜在的な開発候補地の整理を基に、次の研究段階にむけた適切な調査対象地の絞り込みを行った。この過程において、国内の地熱開発と国内外のエネルギー政策の専門家からなる「地熱ガバナンスナンス研究会」を研究代表者が中心となって開催し、検討を重ねた。その結果、東京都八丈島町における新規の発電事業者を招いての地熱開発の事業継続に関する事例調査を展開した。同調査においては、八丈町からの資料提供等の調査協力を得ている。加えて、持続可能性アセスメントに欠くことのできない社会面の影響評価(SIA)について、先進的な取り組みが確認されたニュージーランドの地熱開発政策の手法についても情報を収集した。以上の結果を、下記に示す複数の研究発表として取りまとめ、発表している。 研究発表にあたっては、第12回アジアアセスメント会議(静岡県立大学)や環境科学会2018年大会などの大会にて発表を行った。加えて、査読付き研究論文の発表とともに、これまでの一連の研究成果を書籍「コミュニティと共生する地熱利用ープランニングと合意形成」(学芸出版)として出版し、広く一般社会に地熱開発に関する知見を発信した。さらに、同書籍の出版に際しては、2018年9月に在日アイスランド大使館にて、同国大使をお招きするとともに国内外の地熱開発関係者を集め、日本の地熱開発の今後についてのシンポジウムを開催し、研究結果の社会的普及を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の地熱開発に関する既存の知見を広く収集するとともに、八丈町における開発事例に関して調査に着手ことに成功し、また「地熱ガバナンス研究会」の複数回の開催を通じて、関係者のネットワークの構築に成功した。さらに、海外の先進的な社会影響評価の手法についても、その情報を収集するとともに、現地関係者と研究協力の関係を構築することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
手続統合型SA(持続可能性アセスメント)のモデル構築すを目指す。このモデルは、「全体のプロセスモデル(成果1)」と各ステップにおける「包括的なリスク評価手法(成果2)」、「リスク対策と便益分配オプション(成果3)」の2つのサブモデルで構成する。包括的なリスク評価手法のサブモデルでは、地域における社会的な資源利用の文脈と共生する持続的な地熱資源利用の枠組みを、総合的に評価する指標体系の整理を目指す。特に、社会的な影響評価については、我が国では未だに十分な経験がないことから、地熱開発を含む再生可能エネルギーとその開発事業における社会影響評価(SIA)について先進的な政策を展開する国、地域の手法も参考にする。このためには、国内外で継続的に事例研究を展開するとともに、社会影響評価の理論と世界の実践例に関する情報を収集し、我が国への適用可能性を含め、その応用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に実施した事例調査に関して、当初想定よりも必要経費の少ない調査となり、これにより経費を削減して実施することが可能であったため。使用計画としては、主として研究成果の国際学会での発表および、事例調査のための旅費として使用する予定である。
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