研究課題/領域番号 |
17K12867
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
笹尾 知世 徳島大学, 地域創生センター, 助教 (60789733)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 参加型デザイン / 仮想都市空間 / 擬似災害体験 / 行動センシング / 地理情報システム(GIS) / 人間生活環境 / ユーザインタフェース |
研究実績の概要 |
近年、大規模災害への人々の意識の高まりから、災害時支援モバイルアプリケーションが数多く生まれている。しかし開発段階で、不特定多数のユーザが実際の被災でどのような機能を欲するか知ることは一般のアプリケーションに比べて難しく、ユーザの暗黙的ニーズを汲み取った被災時支援モバイルアプリケーションのデザインや評価はこれまで容易でなかった。本研究は、ユーザのニーズや使いやすさを汲み取る上で有用とされてきた参加型デザイン手法に着目し、人々が状況を想像しにくい非常時の利用を想定したモバイルアプリケーションの疑似体験型参加型デザイン環境を明らかにすることを目的とする。本研究では、(1)災害支援モバイルアプリケーションを疑似災害体験の中で利用するための疑似体験型参加型デザイン環境開発、(2)ユーザの疑似被災体験の行動データの蓄積機構開発、(3)疑似災害体験環境の評価を行う。 平成30年度は、(1)疑似体験型参加型デザイン環境の開発および(2)ユーザの疑似被災体験の行動データを蓄積するシステムのデザインを行なった。 まず、仮想空間上の都市空間の移動に合わせて実空間上のスマートフォンの位置情報をバックグラウンドで書き換えるために、iPhoneとAndroidアプリケーションをそれぞれ開発した。Androidは計画通り開発が行えたが、iPhoneでは端末の位置情報を書き換えることが困難でありアプリケーション依存になることから、テスト用の地図アプリケーションを開発した。これを用いて、仮想空間上の都市空間移動における、スマートフォンの使用時の様子を観測する実験を行なった。本研究成果は、HCII2019で発表予定である。 また、仮想空間内での人の行動をセンシング・分析するために、眼球の動き、瞬き、上半身の動きをJINS MEMEで記録し、地図上にプロットすることを可能とする環境を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画していたシステムの主要部分の開発を終え、初歩的な実験を行うことができた。本成果はIEICEのHPB研究会で報告した他、発展的内容を国際会議HCII2019で報告することが決まっている。以上のことから、(1)疑似体験型参加型デザイン環境の開発に関しては、ほぼ達成することができたと言える。一方、災害時等、個別の事象を仮想空間上に表現する機能など一部実現できていない機能があるため、これらについては今後も継続して開発を続ける。(2)ユーザの疑似被災体験の行動データの蓄積機構開発に関しては、実験を重ねてデータを収集している段階であり、これから行動データの分析部分の解析を行なっていく計画である。来年度の実験に向けて、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の主目的は、(3)疑似災害体験環境の評価である。そのため、(1)疑似体験型参加型デザイン環境および、(2)ユーザの疑似被災体験の行動データの蓄積機構に関して開発を終えられていない部分を、今年度前半に完成させる。さらに並行して、実験計画を立て、今年度後半には、複数拠点における、複数アプリケーションのユーザビリティ比較評価実験を実施する。その成果を論文と執筆して、本研究のまとめとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発が計画よりも時間がかかっていることから、開発未着手の機能を開発するために充てていた謝金に未使用額が生じた。今年度前半に開発人員を増やすために当該助成金を使用し、開発の遅れを取り戻す。
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