研究課題
本研究では、搭載されたセンサを活用して災害時や観光時等における特定の状況を把握しユーザの行動を支援するモバイルアプリケーションの開発支援環境として、環境条件を定量的に比較することを強みとする仮想空間を活用したユーザビリティテストツールを開発することを目的としている。最終年度は、緊急時を想定した目的地移動と散策行動の比較をするために、前年度に開発したプロトタイプを用い、仮想空間内の移動とモバイルアプリケーションの操作および操作者の体と目の動きを観測する実験を行った。結果、緊急時と散策時での移動スピードや移動経路、立ち止まった場所、街を見回した場所、スマートフォンアプリを閲覧したタイミングを詳細に記録することができた。これはスマートフォンアプリケーションが都市空間の中のどのようなシーンでどのように使われているかを安価でかつ精緻に理解するために、本研究で開発したプロトタイプが役立つ可能性を示唆する結果と言える。また、実世界での実験をした場合に比べて時間の消費量も大幅に軽減されることを定量的に示すことができた。アプリケーションの実験結果は国際会議で発表を行った。本研究を通して、仮想空間を活用することで位置情報系のスマートフォンアプリケーションの評価を行える可能性を示すことができた。搭載センサを活用し周辺状況を認識してサービスを提供する機能は制御が難しいが、同時に、実世界での評価やテスト、改良を行うことも難しかったことから、本システムが果たせる役割は大きい。例えば、実空間での実証実験の難しい災害時支援を目的としたアプリケーションが問題なく意図通りに機能しているかをチェックしたり、ある街を初めて訪れる(一度も訪れた経験のない)人の行動・操作について、多くのサンプルを集めて定量評価することを支援できる可能性がある。
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Distributed, Ambient and Pervasive Interactions. HCII 2019. Lecture Notes in Computer Science, Springer.
巻: 11587 ページ: 172~186
10.1007/978-3-030-21935-2_14