本研究課題では、脳卒中患者の身体活動の臨床的に意義のある最小変化量(Minimal clinically important difference:MCID)を検討することを目的とした。 当該年度はデータ収集を終え、データを分析し、得られた結果について論文を作成し投稿し、学会報告の登録を行った。 対象者は脳卒中を罹患し病院に入院した患者であった。対象者の身体活動の評価には、3軸加速度計が内蔵されたウェアラブルの身体活動量計(Active-style Pro HJA-750C)を用い、入院時と自宅退院後約1か月時点で測定を実施した。本機器で測定されたデータから、対象者の各時点における1日あたりの平均歩数および各身体活動強度(座位活動:SB、低強度身体活動:LPA、中高強度身体活動:MVPA)の平均時間率(%)を算出した。MCIDの推定には、対象者が自身の身体活動の変化の程度を主観で回答するGlobal Rating of Change Scale (GRC)を外的基準として用いた。 解析対象となった18名の対象者の年齢は平均72.8歳であり、脳卒中発症後経過日数は入院時評価時点では平均41.9日、退院後評価時点では146.9日であった。対象者は経過において軽度の運動麻痺は残存したものの、身体機能、歩行能力、生活機能は改善した。GRCで意義ある改善があったと回答した対象者の歩数の変化は平均1828.2歩(入院時:2189.9、退院後:4018.1)、各身体活動強度の平均時間率は、SBは平均-11.2%(入院時:75.0%、退院後:63.7%)、LPAは平均6.9%(入院時:24.0%、退院後:30.8%)、MVPAは平均4.3%(入院時:1.1%、退院後:5.4%)であり、これらが本研究から推計された脳卒中患者の身体活動に関するMCIDであった。
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