【最終年度に実施した研究の成果】 健常者に対して有効性を検討した「患者立脚型コミュニケーション支援アプリ」の臨床的有用性の検討として,3名のALS患者の試用データの収集と解析を実施した.デザインはクロスオーバでの実験研究で,対象者はALS者3名(男性1名,女性2名;年齢は40~70歳代),診断からは2~5年,疾患の重症度はALSFRS-Rで4~23点(球麻痺スコア3~12)と,発話が難しい患者であった.本研究において開発した「患者立脚型コミュニケーション支援アプリ」と旧式のアプリとを交互に使用し,ひらがな20字の入力速度や正答率について検討したところ,新型の方が入力速度は早いものの,正答率が劣ることが示された.本結果については,現在論文にまとめているところであり,今後学術雑誌に投稿予定である. 【研究機関全体を通じて実施した研究の成果】 2018~2019年:「患者立脚型コミュニケーション支援アプリ」を開発するために,ALS患者と家族のコミュニケーション支援に関する質的調査研究を実施した.それにより,コミュニケーション支援アプリには,病気が進行しても使い続けられることや,すでに持っているスマホやタブレットを使用したいことが明らかとなった.これは,身体機能に合わせて機器を買い換える必要がある現状に対して,患者からの問題定義として極めて新規性が高い結果であった. 2020~2021年:市販のPCやタブレットで使用できる「患者立脚型コミュニケーション支援アプリ」を開発した.その際には,患者からのニーズ調査で明らかとなった,身体機能が変化しても違和感を感じずに使い続けることができる点について,特に着目しアプリの表示画面を調整した. 2022~2023年:健常者及びALS者に使用し,入力速度の向上や違和感の軽減などの有効性が明らかとなった.
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