最終年度である今年度では、これまで作製したエマルションゲルの消化特性について、主に胃腸消化酵素の添加とpHの制御により胃腸の消化環境を模倣するin vitro胃腸消化モデルを用いて検討した。咀嚼を模倣するため、消化処理する前に、各種エマルションゲルを2-5mm程度(嚥下できるサイズと言われている)に破砕した。in vitro消化後、各種エマルションゲルからリリースしたエマルションの粒度分布は乳化剤の種類に依存することが分かった。また、それぞれの乳化剤による安定化したエマルションに内包した油滴からの遊離脂肪酸の放出量は、エマルションゲルよりほぼ2倍多いことがわかった。ここで、胃に油滴を消化する酵素が含まれないことから、胃消化のステップでは、遊離脂肪酸の放出が見られなかった。一方、小腸消化のステップでは、遊離脂肪酸の放出量が乳化剤の種類に影響を受けるとわかった。すなわち、ゲル化することで、消化酵素と、油滴の接触を妨げる効果があると示唆される。 摂食後、機能性成分などは混合ミセルの形で小腸上皮細胞を通過し吸収されることが知られている。すなわち、混合ミセルへの機能性成分の取り込み状況が吸収に大きく関与すると考えられる。ここで、各種のエマルションとエマルションゲルを作製し、その内包する機能性成分のミセルへの取込率について検討した結果、ミセルへの取込率が用いた乳化剤の種類に影響を受けることがわかった。また、小さいサイズのエマルシュンがより高いミセル取込率が得られると示唆された。
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