研究実績の概要 |
本年度は、菌株間における酵素遺伝子の発現解析を中心として研究を推進した。具体的には、昨年度に酵素遺伝子配列情報等の基礎的情報を取得した菌株を利用して、子実体形成を行い、菌糸体から収穫後までの各ステージからtotal RNAを抽出し、cDNAを合成した後、リアルタイムPCR法を用いた発現量の解析を行なった。その結果、β-1,3-グルカナーゼにおいては、複数の菌株において、収穫時または収穫1週間後に高い発現を確認した。グルタミン酸プロテアーゼにおいては、複数の菌株において、子実体原基において高い発現を確認した。この結果から、これらの酵素発現は、複数の菌株間で共通していることが示唆された。この結果より、本研究の目的である「他の菌株における酵素のクローニングを試み、菌株間におけるこれら酵素の遺伝子配列比較及び発現挙動を明らかにする。」を達成した。 本β-1,3-グルカナーゼが他の食用きのこにおいても老化に関与しているかを明らかにすることは、きのこの老化における普遍性の証明として重要であると考える。そこで既往研究により報告のあるシイタケと本研究で得られたマンネンタケの遺伝子配列情報を利用し、他の市販食用きのこに関して、発現解析およびこれら遺伝子の配列情報の取得を試みた。しかしながら、今年度は発現解析するための条件を決定するには至らなかった。 また、酵素タンパク質の発現に関しては、無細胞系のタンパク質発現システムを検討するために、発現用のコンストラクトの作成に努めた。本研究のもう一つの目的である「異種発現系を用いて、プロテアーゼ及びグルカナーゼの組換え酵素タンパク質の生成を試み、酵素化学的解析を行う。」に関しては、達成には至らなかったものの、酵母等を用いた異種発現も検討しており、今後の研究のために有用な情報を得ることができたと考える。
|