研究実績の概要 |
ビタミンB12(B12)は、コリノイド化合物の1つで、動物性食品の摂取不足や胃酸分泌の低下は、B12低栄養を招く恐れがあり、サプリメントではなく我が国の食環境に配慮した摂取が望ましい。コリノイド合成乳酸菌には、B12ではなくヒトにおいて不活性なコリノイドを合成することが報告されている。一方で、ヒト糞便中には様々なコリノイドが存在しており、腸内細菌はコリノイドを利用、代謝し、宿主に保健効果をもたらしていることも推測される。そこで、コリノイド産生乳酸菌に着目し、構成成分であるコバルトなどを培地へ添加することによるコリノイド生成量の変化や人工消化系を用いた菌の生残性を検討した。 乳酸菌(L. coriniformis, L. plantarum, L. reuteri, L. collinoides)は、所属大学内で入手した。培地にコリノイド構成成分、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、コバルト(Co)を添加し、培養を行った。菌体からコリノイドを抽出・定量し、抽出液中のコリノイドをLC-ESI/MS/MSにより同定した。 全ての菌で、培地にGluを添加したものは培地中のpHが低下するため、Gln添加に比べ、生菌数が減少した。CoとGlu添加培地のコリノイドは、L.pentosusはB12のみだったが、L.collinoidesはB12と未同定のコリノイドが、L. coryniformisはB12とシュードB12が検出された。以上の結果から、培地への構成成分の添加は、乳酸菌の生育、コリノイド量や生成するコリノイドに影響を与えることが明らかとなった。人工消化系を用いた生残性は、pH2では180分経過時には20%まで減少しており、構成成分添加は生残性に影響を与えなかった。発酵乳を作製したが、カード形成が緩く、通常の発酵乳製造に使用される乳酸菌との併用が必要であると考えられた。
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