研究課題/領域番号 |
17K12893
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研究機関 | 埼玉県産業技術総合センター |
研究代表者 |
成澤 朋之 埼玉県産業技術総合センター, 食品プロジェクト担当_北部, 主任 (60642676)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 揮発性成分 / リポキシゲナーゼ / 小麦 / マイクロアレイ / アイソザイム |
研究実績の概要 |
昨年度は麺の加工工程における揮発性成分の生成メカニズムについての知見が得られ、リポキシゲナーゼ(LOX)の活性の差が麺の揮発性成分の品種間差に関与していることが示唆された。また、「農林61号」において、特異的に高いLOX活性を示し、これは遺伝的な要因によるものと思われた。それを検証するため、小麦をバイオトロン内で育成し、その登熟期の種子よりmRNAを抽出しマイクロアレイに供し、品種間の遺伝子発現の差の検討を試みた。しかし、あまり思わしい結果は得られなかった。 そこで、不飽和脂肪酸の酸化部位が異なると知られているLOXアイソザイムについて、陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画を行った。その結果、「農林61号」、「さとのそら」、「あやひかり」、「関東139号」の4品種間でクロマトグラムに差が認められたが、一部の品種のLOXアイソザイムにおいて保持時間が大きく異なっていることが確認され、組換えなどの要因により品種によってLOXタンパク質の表面電荷が大きく異なっている可能性が示唆された。 また、揮発性成分の品種間比較を行った結果、黄色い色素成分であるルテインを多く含むことが知られている品種「あやひかり」において、不飽和脂肪酸の酸化生成物であるアルデヒド類等の生成量が少ないことが確認された。「あやひかり」は特段LOX活性が低い品種ではないため、抗酸化能を有するルテイン、不飽和脂肪酸の過酸化物に対し働きかけ、過酸化物がアルデヒド類へ分解することを阻害したものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたマイクロアレイでは思わしい結果が得られなかった。そこで、揮発性成分の生成に関与しているLOXアイソザイムに対象を切り替えて、陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画を行った。このアイソザイムの分析の結果、品種間差が見られた。しかし、タンパク質の同定や代謝生成物の特定などの課題が新たに発生したため、そちらに取り組んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
LOXの代謝生成物である過酸化脂肪酸の生成比の品種間差を分析し、揮発性成分の生成への影響を解明する。また、過酸化脂質の消去能を有すると考えられる抗酸化物質の影響についても着手する。一方、マイクロアレイでは差が出なかった遺伝的な差については、定量PCRなどの手法により解析が行えるか検討する。また、「農林61号」と「さとのそら」の掛け合わせ非選抜群を用いることにより、LOX活性のバラつきと揮発性成分生成の相関についても検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイについて思わしい結果が出なかったため、チップ代が予定よりかからなかった。次年度は、LOX代謝生成物である過酸化脂肪酸の解析を予定しており、それらの標準物質等の購入に充てる予定。また、定量PCRなどの検討も行うため、プライマーなどの費用にも充てる。さらに、LOX活性のバラつきがある非選抜群の揮発性成分分析やLOX活性測定も予定しているため、標準物質等の消耗品費とする。旅費については、学会参加や測定機器を借りる大学等へ行くため等に充てる予定である。
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