研究課題/領域番号 |
17K12893
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研究機関 | 埼玉県産業技術総合センター |
研究代表者 |
成澤 朋之 埼玉県産業技術総合センター, 食品プロジェクト担当_北部, 主任 (60642676)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小麦 / 風味形成 / 酵素 / 酸化 / 抗酸化物質 / 過酸化脂肪酸 / カロテノイド |
研究実績の概要 |
昨年度は不飽和脂肪酸の酸化部位が異なると知られているリポキシゲナーゼ(LOX)アイソザイムについて、陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画を行った。その結果、「農林61号」、「さとのそら」、「あやひかり」、「関東139号」の4品種間でクロマトグラムに差が認められた。そこで本年度は,抽出LOXを基質となる不飽和脂肪酸と反応させることで過酸化脂肪酸を生成し,その構造異性体比を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により算出した。その結果,リノール酸を基質とした場合,上記4品種の中で農林61号は9-過酸化リノール酸を生成する割合が最も高かった。9-過酸化リノール酸からは不飽和アルデヒドが生成されるため,農林61号の独特な風味の形成要因の一つであることが示唆された。 また,昨年度の結果から,小麦粉中に含まれるルテインの持つ抗酸化作用が,揮発性成分生成を抑制している可能性が示唆された。そこでルテインに代表されるカロテノイドについて,小麦粉中に含まれる含有量をHPLCにより算出し,揮発性成分生成との相関関係を検討した。その結果,検出されたカロテノイドの中でルテインが突出して多かった。また,ルテインの含有量は上記4品種の中で農林61号において最も少なく,ルテインの含有量は不飽和脂肪酸の酸化分解生成物であるアルデヒド類などと負の相関を示した。このことから,ルテインは揮発性成分生成に対して阻害作用を有していることが示唆された。 「農林61号」と「さとのそら」の掛け合わせ非選抜群を用いることで,LOX活性のバラつきと揮発性成分生成の相関について検討をした。その結果,飽和アルデヒドについてはLOX活性と相関を示したのに対し,不飽和アルデヒドは相関を示さなかった。このことから,不飽和アルデヒドには,その生成過程に副反応が存在しているか,または分解反応が存在していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LOXにより生成される過酸化脂肪酸の品種間差,カロテノイドの揮発性成分に対する影響,およびLOX活性のバラつきがある未選抜群による揮発性成分生成の個体差について検討を行った。そのため,タンパク質の同定や定量PCRについては着手できなかった。また,新たに不飽和アルデヒドの副反応が存在する可能性が示唆されたため,検討課題が残っている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
不飽和アルデヒドについて副反応が示唆されたため,どのような反応が起きているのか検討を行う。具体的には,生地熟成を行い,不飽和アルデヒドの増減やそれに伴い変化する化合物種について相関解析などで検討を行う。また,カロテノイドについて,揮発性成分生成の阻害をした際に生成されると考えられるカロテノイド酸化物またはその分解生成物が存在しているものと推測されたため,その生成物の蓄積を検出できるか検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により,出張などが取りやめとなったため,次年度使用額が生じた。 前年度に示唆された副反応について,抽出方法や分析方法などについて検討を行う。また,これらの結果をまとめて論文投稿を行う。
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