研究実績の概要 |
小麦粉に加水を行い,インキュベーター中で生地熟成を行った。その結果,小麦粉中に含まれる抗酸化物質であるルテインは減少した。熟成中のルテイン減少量はどの小麦品種でも共通して,1等粉よりも2等粉で多かった。4時間の生地熟成後のルテイン残存量は農林61号2等粉で最も少なかった。この農林61号2等粉は揮発性成分の生成量が高く,LOXによる不飽和脂肪酸の酸化に起因する揮発性成分生成反応が,抗酸化物質であるルテインの少なさ故に他の品種より進行したものと推測された。 昨年度の結果では不飽和アルデヒドにおいて副反応が起きている可能性が示唆された。熟成生地をGC/MSにより香気成分分析を行った結果,アルデヒド類とともにフラン類の増加も確認できた。このフラン類は,不飽和アルデヒドのα,β-不飽和部において分子内環化付加反応が進行して生成されるという報告がある。そのため,インキュベーター内での生地熟成においてこの反応が進行して生成されたものと推測された。
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