研究課題/領域番号 |
17K12896
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
今井 千裕 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50778842)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 栄養疫学 / 母子コホート研究 / DOHaD / エピゲノム / DNAメチル化 / 妊娠期環境要因 |
研究実績の概要 |
妊娠期を健康に経過することは、出産後の健康および児の生涯の健康にも重要である。しかしながら、妊娠期の健康の評価は、母体への身体的・心理的負荷や生理的変化の必需的な曝露、栄養・生活環境といった様々な要因が関与することから容易でない。これまでの研究において申請者は、食後高血糖などの栄養刺激による炎症反応の根底には、エピジェネティックな変化・維持が関与することを明らかにしている。このことから、内外的な影響を受けやすい妊娠期においてもエピジェネティックな変化が生じており、妊娠期の健康を左右する様々な要因を反映するパラメーターとして有用ではないかと考えた。 本研究の目的は、妊娠中期および後期に採取した血液におけるエピゲノム変化と、妊娠中の母体の栄養・生活環境要因との関連を調べ、妊娠中のエピゲノム変化を起こす要因や母児の健康指標との関連を明らかにすることである。 平成29年度は、対象者のリクルートおよびデータの取得・蓄積と、ゲノム・エピゲノム解析を並行して進めた。本研究は、東京医科歯科大学附属病院で出産予定の母児を対象とした前向きコホート研究で、現時点で約100名の母親から研究協力の同意を得ており、うち82名が出産済みである。また、妊娠中に行った栄養・生活環境要因調査、健診情報等をまとめたデータベースは65名分を作成し、データの取得・蓄積が進んでいる。 エピゲノム解析は、平成29年度に予定していた解析対象検体の選定や検体データベースの作成、候補遺伝子領域のパイロット試験が終了し、母体血を用いた定量的DNAメチル化解析に着手した。CPT1A遺伝子やSREBF1遺伝子のDNAメチル化を測定し、LDLコレステロール等の血液生化学指標や体重データなどと合わせて、妊娠期の体格や血中脂質濃度の変化が母体のエピゲノムに与える影響について検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、最終的な解析対象人数を100-200名とし、平成30年度までに目標対象者数の同意を得る予定であった。現時点での同意人数は100名を越えており、本研究の解析対象となる情報は、児の出生児体格等の形質データまでとなるため、予定通りに対象者のデータ取得は終了する見込みである。しかしながら、早産等の事由により、母体血が中期および後期で揃わなかった対象は解析から除外する予定のため、検体の採取状況をふまえながらリクルートを継続していく予定である。また、対象者ごとの栄養・生活環境要因、形質情報をまとめた統合データの作成も予定通りに進行している。 エピゲノム解析では、妊娠の経過によって変わる体格や脂質関連要因とCPT1A遺伝子およびSREBF1遺伝子のDNAメチル化との関連を検討するため、解析対象検体を選定し、データ整理を行った。現在までに母体血でのDNAメチル化測定まで着手できており、おおむね測定が終了している。今後は、遺伝子多型が基となるエピゲノム変化を併せて検討するため、遺伝子多型のタイピングなども行っていく予定である。 これらの状況から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降も対象者のリクルートを継続し、対象者数のさらなる確保に努め、データの取得・蓄積を進める。脂質代謝に関連するCPT1A遺伝子およびSREBF1遺伝子のDNAメチル化の妊娠経過による変化と栄養・生活環境要因との関連については、遺伝子タイピングを早期に実施し、解析に含める。また、DNAメチル化の継時的な変化を検討する上で、新たに白血球の細胞組成を考慮する必要性が生じたため、血液細胞組成の推定の実験を行い、それらをふまえて成果を公表していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
DNAメチル化解析に必要なSpectroCHIPを購入するために、次年度分と併せて使用する予定である。
|