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2018 年度 実施状況報告書

妊娠中のエピゲノム変化を起こす栄養・生活環境要因と母児の健康指標との関連

研究課題

研究課題/領域番号 17K12896
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

今井 千裕  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50778842)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード妊娠中のエピゲノム変化 / 母子コホート研究 / DNAメチル化 / 妊娠期栄養 / DOHaD / 妊娠期環境要因
研究実績の概要

妊娠期の母体は胎児の成長に最適な状態を作り出すため、短期間の間に身体的および生理学的に劇的な変化を受ける。特に妊娠中期から後期にかけては、母体の脂質代謝は同化状態から異化状態への変化を特徴とし、脂肪蓄積や胎児成長などに伴う体重増加、ならびに血中脂質濃度の上昇といった肥満類似形質が出現する。成人の末梢血白血球を用いたEWAS研究では、脂質代謝関連遺伝子CPT1Aイントロン1およびSREBF1イントロン1のDNAメチル化レベルと、BMIや血中脂質濃度が関連することが報告されているが、妊娠期間の形質変化によって、これら遺伝子のDNAメチル化が変わるかは知られていない。そこで本学附属病院での前向き出生コホート研究において採取された妊娠中期および後期の母体血を用いてDNAメチル化レベルを測定し、妊娠中のBMIおよび血清LDL-C濃度との関連を調べたところ、これらの関連性は、妊娠中であっても成人EWAS解析で見られた所見と同様の傾向が認められたが、興味深いことに、SREBF1イントロン1におけるこれらの関連性は、妊娠期の脂質代謝の同化から異化への代謝シフトと同調するように、妊娠後期において弱まった。一方でCPT1Aイントロン1のDNAメチル化とBMIとの関連性は、妊娠後期に強まる傾向がみられた。この部位のDNAメチル化は、血球細胞の種類によって差があるため、本研究では細胞種特異的なマーカー遺伝子のDNAメチル化レベルから全血の白血球細胞組成を推定することを試みた。その結果、この関連性は妊娠中期から後期にかけてのリンパ球の割合の妊娠前BMI依存的変化によって仲介されていることが明らかとなった。以上のことから、妊娠期におけるこれら脂質代謝関連遺伝子のDNAメチル化の変化は、その対象者の代謝的変化および免疫学的変化を反映することがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、妊娠中の体重増加や血中脂質濃度上昇などの肥満形質の形成と、脂質代謝遺伝子のDNAメチル化との関連を明らかにし、妊娠期の脂質代謝関連遺伝子のDNAメチル化は、妊娠中の代謝変化あるいは妊娠前BMIに依存した白血球比率の変化に仲介されるという知見を得て、論文にまとめた。本母子コホート研究のリクルート状況については、最終的な解析対象人数を100-200名としていたが、本年度までに120名を超える対象者の同意を得ることができた。さまざまな事由により母体血の取得が困難な例も含まれるが、およそ100組の母児を解析対象として、生活環境要因や食事摂取状況などとともに、他の遺伝子のDNAメチル化との関連についても解析することが可能である。DNAメチル化解析については、他の候補遺伝子についても徐々に着手している状況である。さらに本研究では、従来の末梢血を用いたDNAメチル化解析において考慮されることが少なかった白血球比率の違いを調整した上で解析を行うために、細胞種特異的なマーカーを用いて、DNAメチル化レベルから細胞組成の推定を試み、その方法の妥当性も検証できている。これらの状況から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

本年度で対象者のリクルートは予定通り完了したため、今後は健診情報、食事記録、メンタルヘルスや生活状況調査の結果を統合し、同一母児に対する妊娠期から出生後までの総合データベース作成を迅速に進める。またDNAメチル化解析をさらに進め、妊娠中のエピゲノムと母児の健康指標との関連を調べていく予定である。栄養代謝に関連する遺伝子の解析では、遺伝子多型の影響を考慮する必要性があるため、必要に応じて遺伝子多型のタイピングを進めていく。

次年度使用額が生じた理由

DNAメチル化測定の進捗状況によって不足すると予想していた試薬等が、本年度分の研究を遂行する十分量が確保できたため、本年度の購入は行わずに来年度実施予定のジェノタイピング試薬等の購入に充てることとした。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Metabolic and Immunological Shifts during Mid-to-Late Gestation Influence Maternal Blood Methylation of CPT1A and SREBF12019

    • 著者名/発表者名
      Pavethynath Shilpa、Imai Chihiro、Jin Xin、Hichiwa Naomi、Takimoto Hidemi、Okamitsu Motoko、Tarui Iori、Aoyama Tomoko、Yago Satoshi、Fudono Ayako、Muramatsu Masaaki、Miyasaka Naoyuki、Sato Noriko
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 20 ページ: 1066~1066

    • DOI

      10.3390/ijms20051066

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 妊娠後半期の末梢血における脂質関連遺伝子のDNAメチル化2019

    • 著者名/発表者名
      Pavethynath Shilpa、今井千裕、JIN Xin、飛知和尚美、瀧本秀美、岡光基子、樽井依織、青山友子、矢郷哲志、不殿絢子、宮坂尚幸、佐藤憲子
    • 学会等名
      第73回日本栄養・食糧学会大会
  • [学会発表] Intra- and Inter- individual Differences in CPT1A and SREBF1 Methylation of Maternal Leukocytes During Mid-to-Late Gestation2019

    • 著者名/発表者名
      Imai Chihiro, Pavethynath Shilpa, Jin Xin, Hichiwa Naomi, Takimoto Hidemi, Okamitsu Motoko, Tarui Iori, Aoyama Tomoko, Yago Satoshi, Fudono Ayako, Muramatsu Masaaki, Miyasaka Naoyuki, Sato Noriko
    • 学会等名
      DOHaD 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Associations between maternal mental health, nutrition, and neonatal outcomes in Japanese birth cohort.2018

    • 著者名/発表者名
      Okamitsu Motoko, Takimoto Hidemi, Sato Noriko, Yago Satoshi, Imai Chihiro, Tay Zar Ktaw, Nay Chi Htun, Aoyama Tomoko, Fudono Ayako, Miyasaka Naoyuki
    • 学会等名
      16th WAIMH WORLD CONGRESS
    • 国際学会
  • [学会発表] 妊娠による炎症関連遺伝子TNFのGene body領域DNAメチル化状態の変化2018

    • 著者名/発表者名
      金昕、今井千裕、Shilpa Pavethynath、飛知和尚美、瀧本秀美、岡光基子、Nay Chi Thun、青山友子、矢郷哲志、不殿絢子、宮坂尚幸
    • 学会等名
      第7回日本DOHaD学会学学術集会
  • [学会発表] 新生児におけるSKI遺伝子ADHD関連部位のDNAメチル化個人差2018

    • 著者名/発表者名
      飛知和尚美,今井千裕,Shilpa Pavethynath,金昕,瀧本秀美,岡光基子,Nay Chi Thun,青山友子,矢郷哲志,不殿絢子,宮坂尚幸,佐藤憲子
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会

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公開日: 2019-12-27  

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