研究課題
本研究の目的は、牛乳中に含まれる細胞外小胞(牛乳EV)が大腸がん細胞の増殖に及ぼす影響を検証することである。平成30年度までの検証結果から、牛乳EVは大腸がん細胞株HT29の細胞周期に作用し、G1期(DNA合成準備期)からS期(DNA合成期)へ移行を阻害することで細胞増殖活性を抑制していることが明らかとなった。また、牛乳EV中には大腸がん細胞の増殖を抑制することが報告されているmiRNAが含まれていることが明らかとなった。これらの結果を受けて令和元年度は以下の①~③の項目を検証した。①大腸がん細胞における細胞周期進行に関わるタンパク質発現に対する牛乳EVの影響:G1期からS期への移行に関わる主要タンパク質CyclinD1、CyclinE、CDK2、およびCDK4の発現を牛乳EV処理したHT29で評価した。その結果、HT29におけるこれらのタンパク質発現は牛乳EVによる影響を受けなかった。②大腸がん細胞における牛乳EV中のmiRNAが標的とするタンパク質発現に対する牛乳EVの影響:牛乳EV中に確認されたmiRNAのうち発現量が高かったmiR-342のターゲットであるDNMT1の発現を牛乳EV処理したHT29で評価した。その結果、HT29におけるDNMT1の発現は牛乳EVによる影響を受けなかった。①および②の試験結果からは牛乳EVが細胞周期の進行を阻害する機序を明らかにすることができなかったが、今後牛乳EV中に含まれるその他のmiRNAが阻害に関わっていないかを検証し、牛乳EV中の活性分子を特定する。③牛乳の殺菌方法が牛乳EVの作用に及ぼす影響:無殺菌牛乳、低温殺菌牛乳および超高温殺菌牛乳から牛乳EVを回収し、HT29の細胞増殖活性に及ぼす影響を検証した。その結果、牛乳EVの細胞増殖活性は牛乳の殺菌やその殺菌温度による影響を受けないことが明らかとなった。
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Bioscience of Microbiota, Food and Health
巻: - ページ: -
https://doi.org/10.12938/bmfh.2020-012
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