本研究は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症機序を解明するため、肝臓への脂肪蓄積におけるユビキチンリガーゼの生理的意義を明らかにすることを目的とした。昨年度に引き続き、今年度も食餌時刻を乱したマウスを脂肪肝モデルとし、解析を行った。マウスの食餌時刻を乱すために、1日8時間のみ摂餌できる時間制限給餌を8週間行い、脂肪肝モデルマウスを作製した。本モデルマウスにおいては、食餌時刻を昼夜逆転することにより、1週間で急速に肝臓へ脂肪が蓄積する。肝臓への脂肪蓄積が亢進すると、Cbl-bをはじめとするいくつかのユビキチンリガーゼのmRNA発現レベルが増大または減少すること、mRNAレベルにおいて日内リズムが影響を受けることが分かった。Cbl-bのタンパク質レベルでの発現量は、肝臓の脂肪蓄積量と有意な相関がなかったものの、傾向としては正の相関が認められた。Cbl-bを高発現する細胞種について検討したところ、肝細胞よりも免疫担当細胞であるクッパー細胞においてmRNAとタンパク質レベルともに高い発現量が認められた。Cbl-b以外にも、これまで脂肪肝やNASHとの関連が報告されていないユビキチンリガーゼの変動を見出した。しかし、本研究計画期間内ではそのユビキチンリガーゼの肝脂肪蓄積における生理的意義を明らかにすることはできなかった。本研究計画において同定したユビキチンリガーゼが脂肪肝発症に関わるかどうかについては、さらなる研究が必要である。
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