研究課題/領域番号 |
17K12903
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
宮崎 希 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (40725876)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エクオール / 味噌 / 機能性食品 / 排尿障害 |
研究実績の概要 |
これまでに味噌由来エクオール産生菌の単離、同定とエクオールによる下部尿路閉塞ラットの膀胱過活動の発生予防について検討を行った。 ・味噌由来エクオール産生菌の単離と同定 米味噌、豆味噌、麦味噌の各味噌の抽出物を高速液体クロマトグラフィーで測定したところ、豆味噌中にのみエクオールが存在していることを見出した。そこで、火入れ前の味噌からこのエクオール産生菌の単離を試みた。まず、味噌からDNAを抽出し、これまでに報告のあるエクオール産生遺伝子を標的にPCRを行ったが、目的遺伝子は検出されなかった。次に、エクオールが検出できた味噌から菌を単離培養し、豆乳をイソフラボン源として使用し培養上清のエクオールを測定したところ、Pediococcus属の菌がエクオールの産生に関与していることがわかった。Pediococcus属は味噌の乳酸菌として知られており、すでに利用されている微生物であることから、エクオールの効率的な産生条件を検討し、すぐにでも応用可能だと思われる。 ・下部尿路閉塞ラットにおける膀胱過活動発生に対するエクオールの予防効果 現在、男性の過活動膀胱の動物モデルである下部尿路閉塞(BOO)ラットを用いて、エクオール摂取による膀胱過活動の発生への影響を検討している。ラットはSham群、BOOコントロール群、BOOダイゼイン摂取群、BOOエクオール摂取群の4群で行っている。餌は大豆成分を抜いた特殊飼料をベースに、ダイゼイン群はダイゼイン(0.25 mg/g, 1日約5mg換算)を添加した飼料、エクオール群はエクオール(0.25 mg/g, 1日約5mg換算)を添加した飼料を使用した。これまでに約半数の測定を終えたところであるが、エクオール投与群>ダイゼイン投与群で膀胱過活動の発生が抑制されている傾向が見られた。日常的にエクオールもしくは豆製品を摂取することで過活動膀胱の予防が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・味噌由来エクオール産生菌の単離と同定 火入れ前の味噌からエクオール産生菌の単離を試みた。まず、味噌からDNAを抽出し、これまでに報告のあるエクオール産生遺伝子を標的にPCRを行ったが、目的遺伝子は検出されなかった。次に、エクオールが検出できた味噌から菌を単離培養し、豆乳をイソフラボン源として使用し培養上清のエクオールを高速液体クロマトグラフィーで測定を行い、エクオールが検出できた菌の16S rRNAのシークエンスにより菌の同定をしたところ、Pediococcus属の菌がエクオールの産生に関与していることがわかった。 ・下部尿路閉塞ラットにおける膀胱過活動発生に対するエクオールの予防効果 現在、男性の過活動膀胱の動物モデルである下部尿路閉塞(BOO)ラットを用いて、エクオール摂取による膀胱過活動の発生への影響を検討した。ラットはSham群、BOOコントロール群、BOOダイゼイン摂取群、BOOエクオール摂取群の4群で行っている。餌は大豆成分を抜いた特殊飼料をベースに、ダイゼイン群はダイゼイン(0.25 mg/g, 1日約5mg換算)を添加した飼料、エクオール群はエクオール(0.25 mg/g, 1日約5mg換算)を添加した飼料を使用した。これまでに約半数の測定を終えたところであるが、エクオール投与群>ダイゼイン投与群で膀胱過活動の発生が抑制されている傾向が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
・味噌由来エクオール産生菌の単離と同定 豆味噌から検出できたエクオールはごく微量のため、味噌を作る条件では十分量のエクオールを作ることはできないと考えられる。今後の研究では、はじめに、豆味噌からエクオール産生菌として単離したPediococcus属の菌のエクオール産生遺伝子が既に報告されている遺伝子のPCRでは検出できないため、単離した菌の全ゲノムシークエンスを行いエクオール産生遺伝子を同定する。また、現在の培養条件では微量のエクオールしか検出できないため、このままでは食品への応用はできないと考えられる。そのため、エクオールを効率よく産生する培養条件の検討を行い、エクオールの産生量を増加させる。 ・下部尿路閉塞ラットにおける膀胱過活動発生に対するエクオールの予防効果 現在までに予定している例数の約半数を終えたところであり、今後残りの検討を行い、組織学的検討や酸化ストレスマーカーの測定などを行い、作用機序の検討を行う。 また、臨床試験として前立腺肥大症患者の尿を解析し、エクオール産生者と過活動膀胱発症者に関連があるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬などの購入を定価で計算していたが、メーカーのキャンペーンなどで少し安く手に入ったので少し余りがでた。次年度使用額は再検討用の酸化ストレスマーカー測定キットの購入費として使用予定である。
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