研究実績の概要 |
エクオール産生菌の同定および前立腺肥大症に伴う過活動膀胱の発生に対するエクオールの予防効果の検討を行った。 まず味噌から単離したエクオール産生菌の同定については、前年度までにPediococcus属菌が味噌におけるエクオール産生に関与していることを確認した。そこで、最終年度はどの遺伝子がエクオール産生に関与しているのかを検討した。これまでに報告されているエクオール産生菌(Eggerthella, Slackia, Lactococcus)が有するエクオール産生関連遺伝子に相同性のある遺伝子は見つからなかったため、Pediococcus属菌がもつ酸化還元酵素に関連する遺伝子をクローニングし、大腸菌での単独発現系を構築し酵素反応から遺伝子の同定を試みた。全ゲノムシークエンスの結果をもとにアノテーションを行った結果から酸化還元酵素と確認された遺伝子40個について検討を行ったが、ダイゼイン還元酵素、ジヒドロダイゼイン還元酵素、テトラヒドロダイゼイン還元酵素に相当する遺伝子は発見できなかった。 前立腺肥大症に伴う過活動膀胱の発生に対するエクオールの予防効果の検討については、ラットにおける前立腺肥大症モデルは下部尿路閉塞モデルを用いて検討を行った。前年度までに下部尿路閉塞モデルにおける膀胱機能障害の発生をエクオールが予防することを明らかにし、その機序が抗酸化ストレスによるものだけではないことを考察した。そこで最終年度は抗酸化ストレス作用以外の機序を明らかにするために神経保護作用や膀胱リモデリングに関与する経路について検討を行った。膀胱組織の神経細胞の免疫蛍光染色を行い、有意差は認められないもののエクオールによって徐神経が軽減される傾向が確認できた。膀胱リモデリングに関与する結合組織成長因子やコネキシン43の発現においては、コネキシン43においてのみ病態群に比べて発現抑制効果が認められた。
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