研究課題/領域番号 |
17K12905
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
小林 慧子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助手 (50611117)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セラミド / NAFLD / 線維化 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、脂肪の蓄積により慢性的な炎症を呈する代謝性疾患であり、このうち10~20%は肝硬変や肝細胞癌の発症母地にもなる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へと進行する。この増悪を簡便かつ正確に診断する方法が求められているが、現時点では肝生検以外の確定診断ができないことが大きな問題となっている。生理活性脂質セラミドは、炎症などの刺激を受けて増加することが知られているほか、申請者の過去の研究では、特異的なセラミド分子種の増加が動脈硬化の病変部位で増加することを見出していることから、セラミドの分子種の違いがNAFLDの病態増悪に寄与すると考えている。 前年度に引き続き、NAFLDモデルラットの作製方法を再度検討した。5週齢のラットを群分けし、コントロール群にはCE-2食を自由摂食させ、高脂肪・高コレステロール+コール酸食(ラード20%,コレステロール2.5 %, コール酸0.1%)を自由摂食させる群をHFCC群とした。これらをさらに①摂食開始と同時に低濃度LPSを週2回投与する系と、②脂肪肝形成後に低濃度LPSを投与する系に分けて評価を行った。前者①はLPS投与開始14週で解剖し評価を行ったが、HFCC群において高度な線維化形成は見られなかった。②においては20週目で充分な脂肪肝形成が見られたため、低濃度LPSにより炎症を惹起させ線維化形成の促進を試みたが、LPS濃度の検討が充分でなかったため、1回目の投与でHFCC群の3分の2を喪失してしまった。残ったHFCC群の肝臓組織切片のSirius Red染色結果から、LPSの単回投与により、肝臓の線維化が惹起されることが示された。 また、肝臓におけるセラミド量を定量したところ、総量に差は無いが、HFCC 群はコントロール群に比して特定のセラミド分子種の割合が大きく変化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では前年度までにNAFLDモデル動物の肝臓中および血中のセラミド動態の網羅的解析を予定していたが、サンプル数が足りないことから、解析は全て終了していない。 しかし、脂肪肝形成後にLPSを腹腔内投与することで、線維化が惹起されること、さらに線維化モデルでは肝臓中のセラミド総量に変化は無いが、特定のセラミド分子種の割合が変化することが示唆されたため、NAFLDの病態増悪の過程でセラミド分子種の代謝変化が起こることが予想された。次年度は線維化形成に有効なLPS濃度を検討しなおし、NAFLDの病態増悪に関わるセラミド分子種について、総合的な評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度までの結果から、NAFLDの線維化形成には、脂肪肝形成後に低濃度のLPSを投与することが有効であることが示唆された。今年度は線維化形成に有効なLPS濃度及びLPS投与開始時期の検討を行う。また、線維化を形成したラット肝では特定のセラミド分子種が大きく増加することが示されたため、NAFLDの病態増悪に関わるセラミドの各分子種の代謝変化について追及する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
期間中に購入する予定の物品の納期が遅れたため。次年度は物品の購入に充てる予定である。
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