研究課題/領域番号 |
17K12916
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
奥村 寿子 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (20600018)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 玄米 / 湿熱処理 / 米加工食品 |
研究実績の概要 |
本研究では,これまでに主に高アミロース米で得られている湿熱処理のメリットを様々な品種の米に対して応用するため,玄米に対して湿熱処理が与える種々の影響を明らかにする.30年度は,29年度の結果において,湿熱処理の効果がより顕著であった高アミロース米品種の越のかおりと,比較対照として中アミロース品種のこしいぶきについて,生理機能性成分の保持と,湿熱処理米の粉砕処理の影響を検討した.まず,玄米における糠層,および胚芽中の機能性成分として,総ポリフェノール量,抗酸化能値(DPPH,ORAC)の湿熱処理条件による増減を測定した結果,今回実施した湿熱処理条件(0.1 MPa~0.3 MPa,10分間)の範囲では,各測定値はわずかな減少を示したものの大きな影響は見られないことが明らかとなった.また,物理的性質に対する湿熱処理の有無の影響に関しては,デンプン損傷度,粒度分布,糊化度,吸水率を調べた結果,デンプン損傷度は,湿熱処理によって損傷度の値が8%程度増加したが,圧力条件のちがいによる大きな差は見られなかった.一方糊化度については,湿熱処理によって4~28%の増加が見られ,圧力条件が高くなるほど値が増加した.湿熱処理後に粉砕した玄米粉の粒度分布については,おおよそ10~100μmの幅広い粒径にわたって分布していることが分かった.また,湿熱処理米の調理加工特性として吸水率を調べた結果,もっとも高い圧力条件0.3 MPaの湿熱処理玄米は,2時間の浸漬において,未処理玄米と比較して15℃では1.2倍程度,25℃では1.4倍程度の吸水率改善が達成されることが分かった.したがって,今回の結果より,玄米の機能性成分は湿熱処理によって大きく失われることはなく,多少デンプンが糊化するデメリットはあるが,粉砕して粉にしない場合には,炊飯調理前の吸水率を改善できるメリットもあることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに湿熱処理による米のアミロース含量と難消化性デンプン増加,生理機能性向上との関係,糠層・胚芽中の機能性成分の保持への影響,湿熱処理米の米粉への粉砕処理の影響,加工調理に対する適用性の一部について,試験実施が終了している.
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今後の研究の推進方策 |
糠層の生理機能性成分について,これまでに調べた抗酸化成分だけでなく,その他の成分についても湿熱処理の影響を検討する.また,生理機能性成分の胚乳への移行の可能性についても調べる.湿熱処理による米粒の形状変化についても観察し,加工,調理への適用性としては調理,食味評価を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度,当初の実施計画に沿って糠層・胚芽中の機能成分保持をメタボローム一斉分析によって調べたが,その結果,ある特定の数種類の化合物は湿熱処理によって顕著な量変化を示すことが分かった.この結果は,当初の計画では予測していなかった興味深い結果であり,理由や原因についてより詳細に調べる必要性があると考え,次年度に取り組むこととした.
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