本研究は高齢者の機能低下要因と食事との関係に着目し,フレイル予防に有効な食事を明らかにすることを目的としている。昨年度の成果を国際学会(ICN2021 東京)にて発表する予定であったが,COVID-19のため今年度に延期となった。今年度2022年12月に無事ICNが開催され,成果を発表することができた。 研究期間を通じて実施した研究の成果については以下の通りである。 Study1:フレイルと食との関連を明らかにすることを目的とした栄養疫学研究を実施した。 1) 食事・喫煙・飲酒・運動・睡眠の5ライフスタイル要因から健康的な行動を1点とする健康行動スコアを作成した。その結果,滋賀県において約10年で健康行動スコアの平均値が上昇していた。2) 滋賀県女性において,全がんSMRと健康行動スコアに負の関連が認められ,喫煙歴がない者および食事の質が高い者の割合が高いほど全がんSMRが低かった。3) 健康行動スコア0点群と比べて3点群,4点群,5点群で主観的健康感不良リスクが低下した。 Study2:フレイルの指標の一つとしての「貧血」と食との関連についての栄養疫学研究を実施し,赤肉の高摂取が特徴的なProtein foodパターンの高スコア群では低スコア群に比べ貧血リスクが約2割低下した。Protein foodパターンではスコアが高いほど,ヘム鉄と動物性たんぱく質の摂取量が高く,運動習慣者割合が高かった。 本研究では、食事レベルでの高齢者のフレイル予防を目的とした栄養疫学研究を行った。たんぱく質,中でも動物性たんぱく質を十分摂取することがフレイルおよびその関連因子と予防的に関連することを明らかにした。生活習慣要因との関連についても検討し,よい健康行動が増えると主観的健康感がよいと感じる者が多くなることをも明らかにした。上記すべての研究成果を英語論文として発表することができた。
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