研究実績の概要 |
本年度は2つの実験を行った。実験①では,濃度の異なるラクチゾール溶液で口腔内を刺激した後,水で口腔内へ刺激し,その際の甘味強度および嗜好度を測定・評価した。健康な若年成人23名が実験に参加した。被験者は,座位で2分間の安静後,濃度の異なる10種類のラクチゾール溶液(50,100, 150, 200, 250, 300, 400, 500, 750, 1000 ppm)15mLのいずれかを30秒間リンシングした。その後,30秒間隔で水15mLを口に含み10秒間リンシングした。主観的な甘味強度および嗜好度は視覚的評価法を用いてリンシング直後に評価した。主観的な甘味強度は,ラクチゾール溶液の濃度上昇に伴って増加し,300 ppmで定常となった。主観的な嗜好度は,ラクチゾール溶液の濃度上昇に伴って増加し,250 ppmで定常となった。 実験②では,300 ppmのラクチゾール溶液を口腔内へ刺激した後,濃度の異なるスクロース溶液で口腔内を刺激し,その際の甘味強度および嗜好度を測定・評価した。被験者は,座位で2分間の安静後,水あるいは300ppmのラクチゾール溶液15mLを30秒間リンシングした。30秒後に再度,水15mLを口に含み口腔内を10秒間リンシングし,濃度の異なるスクロース溶液(5,10,15,20,30%)15mLを口に含み10秒間リンシングした。評価項目は実験①と同様とした。スクロース溶液刺激時の主観的な甘味強度は,いずれの濃度においても,ラクチゾール条件が水条件(対照)に比べて有意に高かった。本年度は,次の3点が明らかとなった。1:ラクチゾール溶液の濃度と甘味強度の量反応関係は存在する。2:甘味強度はラクチゾール溶液の濃度が300 ppmで定常となる。3:ラクチゾール溶液の口腔内刺激後,スクロースの濃度に関係なく甘味強度を高めることができる。
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