ギムネマシルベスタ溶液のリンシングによる口腔内の甘味受容体活性の抑制が甘味を呈する食物の摂食量に及ぼす影響を検討した。健康な成人男女14名が実験に参加した。被験者は,実験前日の夜および実験当日の朝に規定食を定刻に摂取し実験室を訪問した。被験者は椅子に座った状態で30分間の安静後(朝食摂取2時間後),ミネラルウォーター(Con条件),あるいは濃度の異なるギムネマシルベスタ溶液[0.1%(LGS条件)0.25%(MGS条件)あるいは2.5%(HGS条件)]のいずれか25 mLを口に含み30秒間リンシングした。その30秒後に,ミネラルウォーターで口腔内に残存した溶液や唾液を30秒間かけて洗い流した。続いて,バタークッキー1枚を60秒間かけて摂食し3分間安静にした。被験者はこの一連の手順を繰り返し,バタークッキーを食べたいだけ摂食した。バタークッキー1枚を摂食する毎に,視覚的評価スケールを用いて,主観的な空腹感,摂食可能感,満腹感,食事に対する満足感,甘味,酸味,塩味に対する欲求,味覚強度(甘味,塩味,酸味)および嗜好度(快・不快)を評価した。バタークッキーの摂食枚数は,HGS条件がCon条件およびLGS条件に比べて有意に少なかった。主観的な甘味強度は,HGS条件がCon条件およびLGS条件に比べて有意に低く,MGS条件がCon条件に比べて有意に低かった。酸味および塩味の強度は4条件間で違いがなかった。嗜好度はHGS条件がCon条件およびLGS条件に比べて有意に低かった。摂食終了時の空腹感,摂食可能感,甘味,酸味,塩味に対する欲求は4条件間で違いがなかった。摂食終了時の満腹感および満足感はHGS条件がCon条件に比べて有意に低かった。口腔内における甘味受容体活性の著しい抑制は,バタークッキー摂食時の嗜好度を低下させ,摂食量を低減させる可能性が示唆された。
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