本研究では,中学生の実験計画能力の育成を目標とし,メタ認知スキルの一般化を促す指導方略を開発することを目的としている。この目的を達成するため本研究は,(1)実験計画能力とメタ認知スキルの獲得・一般化に関する理論構築,(2)理論に基づく指導方略の開発,(3)指導方略を用いた予備的授業実践, (4)指導方略を用いた授業実践と効果測定の4 段階で構成した。平成29年度は(1)の理論構築を主として遂行を行った。平成30年度は,(2)の指導方略の開発,および(3)の予備的授業実践を行った。具体的には,プロダクション・システムのフレームワークを援用し,「if(~のときは),then(~する)」 といったプロダクション・ルールの形式で学習者に呈示することで学習の転移を促す学習テキスト(試作版)を作成し,予備的な授業実践を通して成果と課題を明らかにした。令和元年度(当該年度/最終年度)は,(3)の予備実践を踏まえて学習テキストの改良版を作成し,(4)の授業実践と効果測定を行った。プレ・ポストデザインによる評価を行った結果,授業実践後は授業実践前に比べて実験計画書を作成するパフォーマンステストの得点が有意に上昇したことが明らかになった。また,理科の内容を題材とした課題だけでなく,日常生活に関連する課題に対しても得点の上昇が見られた。このことは,実験を計画するというメタ認知スキルの一般化が起こり,学習の転移が生じたことを示す結果である。したがって,本研究で開発したテキストを活用して学習を行うことによって,様々な場面で適用可能な汎用性の高い実験計画能力の育成が可能であると期待できる。
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