本研究において,まず我が国の理科教育における研究倫理や生命倫理の取り扱いについて整理したところ,平成29・30年改訂の学習指導要領では,関係する記述が増え,特に理数科(理数探究基礎・理数探究)において指導することが明記されていた。 次に研究倫理・生命倫理に関する教材開発を行った。具体的にはカイウサギ・テンジクネズミ(モルモット)の飼育を通した生命観の涵養に資する教育プログラム,動物園を活用した生命倫理について考察する教材,中高生の課題研究遂行に関連する教育プログラムの開発を行った。 カイウサギ・テンジクネズミの飼育を通した生命観を涵養する教育プログラムは,小学校段階において,飼育実績がある学校飼育動物を用いて中学校・高等学校段階でも活用可能な飼育マニュアルの作成を試みた。 動物園を活用した生命倫理について考察する教材は,動物園の活動を,地域・教育・経営・飼育の4つの側面から動物園を多面的に考察することを目的として構成した。本教材については小学生・中学生を対象に実践を行い,その効果を検討した。その結果,子どもたちは,社会における科学を実感しながら,コンパニオンアニマルの是非やエンリッチメントについて深く考えることができていた。また,これらの開発した教材は理科のみならず,道徳などの他の教科での活用も可能であることが示唆された。 また,教員対象の研究倫理・生命倫理の指導の実際について質問紙調査を行ったところ,実験結果の操作などの指導は行っているものの,研究倫理・生命倫理を包括的に扱っていることは少ないこと,研究倫理・生命倫理に関する文献を活用していないことが明らかとなった。
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