本研究では,(1)グループ内ピアアセスメントに利用可能な項目反応モデルについて検討する(2)グループの構成方法による能力測定精度への影響を検討する(3)グループの構成方法を実際場面へ適用して評価する,の三つを行うこととしている。 2019年度は,(1)を通して決定した段階反応モデルを,当初の計画とは別の推定法で推定し,それを用いて(2)の検討を行った。推定法の変更は,実際の教育場面での利用のしやすさなど,実用性の高さを求めたことによる。具体的には,当初使用を想定したMCMC法に基づくベイス推定を行った場合の,モデリングの複雑さ,推定ごとの推定値の変動,欠測が生じた場合の扱いにくさを避けるために,多くの項目反応モデルの推定で利用される最尤推定を行うこととした。厳密には,EMアルゴリズムによる最適化を用いた周辺最尤推定法であり,完全情報最尤推定によって欠測データにも対応できるようにした。そして,統計解析ソフトウェアのRを用いて,当該項目反応モデルの推定プログラムを記述した。 能力測定精度への影響の検討にあたっては,シミュレーション研究を行った。具体的には,グループでの学習が行われる規模の授業において,複数の課題に対して受講者同士が評価し合う状況を基本設定とした。その上で,グループ構成とそれに基づいた部分的評価の状況を想定し,発生させたシミュレーションデータを開発プログラムによって分析し,推定可否の比率や推定の精度について検討を行った。 なお,(3)については,新たな検討を行ったことで扱うことができなかったものの,今後の課題として継続して取り組むこととする。
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