研究課題/領域番号 |
17K12946
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
小川 修史 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (90508459)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 研修支援システム / 動画分析 |
研究実績の概要 |
予定していた4つのフェーズ(フェーズ1.問題行動が含まれる動画の収集と分析,フェーズ2.プロトタイプシステムの設計・構築,フェーズ3.プロトタイプシステムを用いた実践的試行,フェーズ4.システムに追加実装すべき機能および修正が必要な機能について検討)のうち,平成29年度に予定していたフェーズ1,フェーズ2まで予定通り進行している。 フェーズ1については,当初問題行動に焦点をあてて議論を進めていたが,児童の問題行動や不適応行動は,自己肯定感や自己有用感の低さに起因しており,当該場面のみを撮影しても行動要因の特定に至らない点が示唆された。先行研究においても,自己肯定感や自己有用感を高めることが問題行動や不適応行動の減少につながる可能性が示唆されていることから,撮影場面を当初の「問題行動や不適応行動が含まれる場面」から「児童が主体的に行動する場面」に変更した。 それに伴い,フェーズ2についても,当初は当該児童の問題行動や不適応行動の要因についてアノテーションで表現させることを想定していたが,当該児童が主体的に行動する場面に着目することの重要性が示唆されたため,児童の主体性を高めるという観点で,教師の発言や行為を分析することを志向したアノテーションシステムを設計し,プロトタイプシステムを構築した。具体的には,教師の発言や行為の結果,児童の主体性が出現したと考えられる動画の一場面に対して,「嬉しい!」「自分を見て!」といった児童の主体性を示す感情を吹き出し型感情アノテーションで表現する機能を準備し,挿入したアノテーションを教師間で共有する仕組みを実装した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は当該児童の問題行動や不適応行動の要因についてアノテーションで表現させることを想定していたが,当該児童が主体的に行動する場面に着目することの重要性が示唆されたため,児童の主体性を高めるという観点で,教師の発言や行為を分析することを志向したアノテーションシステムの開発に研究の方向性を修正し,今後もこの方針で進める予定である。ただし本修正は,対応困難児の行動要因を捉えるという目的に対して,問題行動の側面からのアプローチを試みていたものを,児童の主体性の側面からのアプローチに変更したものであり,研究内容および目的が修正されたわけではない。動画撮影の際の観点の整理,および仮説の修正に当初より時間は要したものの,プロトタイプシステムの開発はスムーズに進行したため,現在は計画的に進行している。 当初はフェーズ3(平成30年度上半期)に実施を予定していた,大学生および大学院生に対するプロトタイプシステムを用いた試行・検証作業も終了しており,一定の効果がある可能性が示唆されたため,システムの開発という観点では予定より早く進行している。一方で,動画は個人情報保護の観点から,再度撮影を依頼する必要があり,研修で使用する動画の入手という観点では予定より遅れていることから,総合的に考えて,「概ね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
教員志望の大学生・大学院生に対して試行した結果,当初は問題行動や不適応行動の対処に着目していたが,本システムの導入により児童の主体性の観点で動画を分析できる可能性が示唆されたため,今年度は実際に研修を実施し,システムの精錬作業を実施する予定である。 具体的なスケジュールとして,フェーズ3 (2018年4月~2018年9月)では,プロトタイプシステムを用いて,実際に研修を実施する。その後,研修日から1ヶ月以上期間を空けて事後報告会を実施し,研修で得られた気づきがどの程度実践場面に反映されたかについて調査する。最後に,研修会で得られたデータと 事後報告会で得られたデータを比較分析することで,システム改良の検討材料とする. ただし,フェーズ1で予定していた動画の撮影が完了していないため,動画撮影を早急に進めていく必要がある。従って,動画撮影は2018年6月中旬,研修は2018年7月中旬に実施する予定にしている。 フェーズ4 (2018年10月~2019年3月)では,:研修パッケージ開発に向けたシステム改良を行う。具体的には,フェーズ3の結果を 踏まえてシステムに追加実装すべき機能,および修正が必要な機能について検討する。その後,システムの設計およびインタフェースの設計を行い,システムを実装する予定であり,順調にいけば,ウェブサイトに成果物およびマニュアルを掲載する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初立てていた仮説を大幅に修正する必要性が生じたため,使用額を変更した。 当初はプロトタイプシステムの構想について,あらかじめ立てていた仮説に基づき情報収集や学会発表する予定であったが,早い段階で仮説を大幅に修正する必要性が生じたため,情報収集や学会発表を後回しにし,仮説の修正作業,および修正した仮説をベースとしたプロトタイプシステムの構築,プロトタイプシステムを用いた仮説の検証を先行的に実施することにした。当初予定していた学会発表は,平成30年度の夏に実施することを検討している。従って,当初平成29年度分で計上していた旅費の使用が想定より少なくなった。 平成30年度は平成29年度に計上していた旅費を使用し,仮説の精錬を目的とした情報収集,およびプロトタイプシステムおよびシステムを用いた実践的試行の結果について発表することを想定している。
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