本研究では,小中学校に在籍する対応困難児の行動要因特定を目的とした研修支援システムの開発に必要な機能について検討した。 まず,児童の主体性を示す感情を吹き出し型感情アノテーションで表現する機能を準備し,挿入したアノテーションを教師間で共有する仕組みを実装した。しかし,実際の指導場面を撮影した動画を用いて,システムの検証を試みる中で,動画の撮影方法に課題があり,アノテーションの挿入につながらない可能性が示唆された。 そこで,ウェアラブルカメラで教師の視点から撮影した動画において,対応困難児が含まれるタイミングを抽出・提示することで,対応困難児に対する意識の有無に関する気づきが発生する可能性に着目し,動画中に対応困難児が出現する場面を抽出・可視化した「視線グラフ」について検討した。視線グラフは動画中に対応困難児が記録されている場面を「教師が対応困難児を意識可能な状態」と捉え,対応困難児が含まれる場面を「意識場面」,含まれない場面を「無意識場面」として,両者を時系列で表示したものとする。また,ウェアラブルカメラを用いるもう一つの利点として,教師と対応困難児の発話のやり取りを明瞭に聞き取ることが可能な点が挙げられる。適切なかかわりの最適解があるわけではないが,自身の特性を客観的に理解するうえで有効であると考えた。発言があった場面を「発話場面」,発話がない場面を「無発話場面」として,両者を時系列で表示した「発話グラフ」を作成した。また,自身の発話内容について振り返る意味で,動画アノテーションで発話内容を表示する機能が有用であると考えた。 提案手法の精錬を目的に,実際に研修を実施し,インタビュー調査を実施した。結果,気づきを獲得する場面が散見され,対応困難児の行動要因特定に必要不可欠な,行動観察の重要性について認識させるうえで,システムの有用性が示唆された。
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